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山田修「展望!ビジネス戦略」(12月18日)

コメダ珈琲店、上場で露呈した快進撃のピーク 大株主、成長限界察知し株式売り抜け狙う

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
コメダ珈琲店、上場で露呈した快進撃のピーク 大株主、成長限界察知し株式売り抜け狙うの画像1コメダ珈琲店1号店(「Wikipedia」より/円周率3パーセント)

 名古屋発祥で現在は全国展開する喫茶店チェーンのコメダ珈琲を運営するコメダ(臼井興胤社長)が、2016年中に株式上場する方針であることが明らかとなった。大株主であるアジア系投資ファンドMBKパートナーズが12月10日までに持ち株会社コメダホールディングスを設立したのが、上場への準備とみられている。

 郊外型喫茶店をフランチャイズ展開している同社は順調に業績を伸ばしている。14年2月期のコメダ店舗全体の売り上げは420億円と対前年同期比16.7パーセント増の好調で、売上高営業利益率は22パーセントとなりスターバックスコーヒージャパンなどの同業大手を上回っている。肝心の加盟店舗数も直近3年間では次のように順調に増加している。

・11年度:38 新店舗(計435店舗)
・12年度:59 新店舗(計487店舗)
・13年度:81 新店舗(計561 店舗)
(同社資料「フランチャイズ契約の要点と概説」より)

 さらに14年度(15年2月期)には610店となる見通しとされるが、この好調な成長を続ける同社が上場をするのは、株主MBKの意向が強いと思われる。まず、コメダは特に多額の資金を必要としない。同チェーンはフランチャイズ展開をしており、直営店は加盟店店長や店員の研修拠点という性格が強く、9店しかない(14年3月時点)。また、製造業でもないので機械設備などの購入も少ない。

●上場はMBKの事情

 一方、MBKはエグジット(出口)戦略として同社を上場するしかない。MBKが同社株式を同じく投資ファンドであるアドバンテッジ・パートナーズから取得したのが13年2月。つまり別ファンドによる2次買収だったわけだ。その買収額は430億円ほどだったと推定されている。アドバンテッジはコメダの持ち分78パーセントを所有していたが、コメダ創業者からの購入額は36億円、MBKへの売却による自社取り分は約257億円と推定できる。つまり約220億円の売却益を得たことになる。

 では、1次取得者だったアドバンテッジが見事な売り抜けを果たしたその分、2次取得者となったMBKは高い買い物をしてしまったのか。実際、MBKがコメダホールディングスの全株式を他のファンドや事業会社に相対で売却しようとすると、取得額の430億円をスタート金額とするのは難しい。

 コメダの直近の年間経常利益額は14億円ほどであり、EBITDA倍率(時価で表されている企業価値が、年間に創出される企業のキャッシュフローの何倍になるかを示す。その会社を取得した時に何年分のキャッシュフローで賄えるかも意味する)は30倍以上、つまり株式取得額の430億円を回収するためには30年以上の回収期間を要することになる。前述のとおり同社の設備投資額が少額なら、減価償却費もEBITDA計算上は無視できる範囲だろう。一般的にM&Aの適正額は、EBITDA倍率7倍程度とされ、積極的なM&Aで日本電産の永守重信会長兼社長は「自分はEBITDAが10倍を買収の上限としている」と述べている。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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