キリン、暗黒の5年間 “果敢”経営のサントリーが逆転、組織改革失敗で意思決定遅延
12月22日、キリンホールディングス(HD)は社長交代を発表した。2015年3月末の株主総会で、三宅占二現社長が退任して代表権のない会長に退き、磯崎功典氏が新社長に就任する。磯崎氏は中間持ち株会社・キリンと事業会社キリンビールの社長を務めている。
三宅氏が社長に就任したのは10年2月のこと。サントリーHDとの経営統合を進めていた加藤壹康(かずやす)社長が統合破談を受けて辞任したため、緊急登板だった。破談の最大の理由が、両者の持ち株比率だった。キリンHDは両社の事業規模などを根拠に当初キリンHD対サントリーHD=1対0.5を提案。その後の交渉で1対0.75までサントリーHD側の比率が引き上げられたが、結局合意に至らなかった。それから5年弱、両社の飲料業界における勢力図は大きく変わってしまった。
三宅社長時代の5年間、それはキリンHDにとっては暗転の時代だった。直近の14年度中間期決算(1-6月)では売上高が前年同期比3.6%減の1兆562億円となり、サントリーHDの後塵を拝してしまった。純利益は実に76.5%減の140億円となった。サントリーHDの純利益は171億円で、通期でもキリンHDはサントリーHDを下回ると予想されている。
サントリーHDの佐治信忠会長は果断な経営を展開してきた。中でも大きな意思決定としては、世界最大の蒸留酒メーカー、米ビーム社の買収と、ローソン会長だった新浪剛史氏の社長スカウトが挙げられる。いずれもオーナー経営者でなければ実現できない大胆な意思決定だった。
そしてこれらの佐治氏の意思決定には、キリンHDとの統合破談がモメンタム(経営力学)として働いたのではないか。つまり、ビーム買収は「キリンHDより大きな規模になるためにM&Aを実現する」という意思、そして新浪氏の獲得は「大企業キリンHDの能吏型サラリーマン経営者とは対極にある個性派カリスマ経営者を後継に」という意思の表れだと受け止められる。
●屋上屋を架したキリン
一方、キリンHD社長の三宅氏の大きなM&A案件としてはブラジル2位のビール大手スキンカリオールを2000億円で買収。しかし、その後1000億円の追加投資を行う事態になり、14年6月期は営業赤字のままだ。