国内社会人向けMBAは無価値?その驚愕の実態 安価なアジア留学がビジネスに有効
MBA(経営学修士)プログラムの日本におけるハシリといえば、慶應義塾大学大学院だった。慶應の場合は日吉キャンパスに2年間に昼間通学するという通常の修士プログラムと同じなので、社会人には敷居が高く感じられた。
2000年代に入り、雨後の筍のように社会人経営大学院コースが開講されたのには、大学側の商売事情も大きかった。少子化の影響が大学にも及んできて、各大学では目新しいプログラムを提供して学生を確保しなければならなくなっていたのだ。結果、地方大学から関西の大学までが東京の地の利のよい場所に「サテライト・キャンパス」を開設し、仕事帰りのビジネス・パーソンの獲得を競い合った。一方、志のあるビジネス・パーソン側からすれば、平日のアフター5と土曜日を使えば2年間で憧れのMBAを取得できる。
しかし、新興のMBAコースの品質は、玉石混淆といった状況も見受けられる。筆者の知り合いがこの9月、ある経営大学院を卒業してMBAを取得した。彼は、「同学年には120名ほどの学生が入学しましたが、卒業までただの1度もクラスメートと会ったことはありません」と驚く話をした。
「授業はすべてインターネット授業で、修士論文はパワーポイントで約30スライドと指定されました。おかげでつくるのはとても簡単で、『論文発表』は3人の先生の前で10分間で終わりました。その先生方は初めて会う人たちでした」(同)
この社会人大学院は、商業的には大成功していることは間違いないだろう。この方式なら、学生を1000人規模でも受け入れられる。
しかし、これでは「学校に行く」ということにはならない。スクーリングの快楽と質の止揚は、教授とインタラクティブに関わり、志と質の高いクラスメートと刺激し合うところに生まれるからだ。
日本の社会人経営大学院と欧米のMBAコースのどちらを勧めるかと問われれば、筆者は文句なく後者を推す。というのは、語学力と強固なネットワーク、海外文化を体感することで培われるモノの見方、ビジネス意思決定の方法などを異国で獲得するということは、他に比すべくもない価値があるからだ。
●アジア一流校留学、とてつもない財産に
とはいえ、欧米のビジネススクールへの留学は近年激減しているのが現状だ。入学を許される英語力や、2年間にも及ぶキャリアの中断、そして何より近年の授業料の高騰などがその理由だ。ハーバード大学などトップ・スクールで学ぶ費用は、生活費を含めると2年間で2000万円になったと聞く。その間の「得べかりしサラリーマンとしての年収」も足し合わせると、よほど経済的に余裕がなければ選択できる途ではない。