サムスン、「傲慢と過信」で内部崩壊の兆候 日本半導体、「過剰品質」で復活のシナリオ
つまり、世界半導体市場は数年単位でみればミクロな乱高下はあるが、40年の長期展望では確実に成長する産業であるといえるのだ。この予測に、多くの投資家たちが唸った。これまでに、上記のような大胆な仮定を設けた上で論理的に計算した長期展望を目にしたことがなかったからである。
●なぜ日本半導体は凋落したのか?
世界の半導体市場は成長しているのに、なぜ日本の半導体業界は凋落し続けているのか。かつては半導体メモリDRAMで80%、半導体全体でも50%の世界シェアを占めていたにもかかわらず、なぜDRAMから撤退し、シェアが低下し続けているのか。東芝のNANDフラッシュメモリのように健闘している分野もあるが、「日本の極度の不振」にアジアの投資機関は最も大きな関心を持っていた。
筆者は図3を用いて、日本凋落の理由を説明した。日本は1980年代にメインフレーム(大型汎用コンピュータ)用に25年保証の高品質DRAMを製造することによって世界シェア1位となった。この時、日本企業には品質の極限を追求する技術文化が深く浸透した。そのような時、1990年代にコンピュータ業界がメインフレームからPCへパラダイムシフトした。にもかかわらず、相変わらず日本企業は高価な25年保証のDRAMをつくり続けてしまった。その結果、「安価に大量生産」した韓国企業にコスト競争で完敗した。つまり、典型的な「イノベーションのジレンマ」が起きたのだ。高品質病はDRAM撤退後も治らず、それゆえ12年にエルピーダは倒産し、ルネサス エレクトロニクスは産業革新機構等に買収され、実質的に国有化された。
この解説に、ほとんどの投資家が驚きの声を上げた。そして「日本半導体の経営者はパラダイムシフトを知らなかったのか?」「開発や製造現場はどうしていたのか?」「倒産したエルピーダも高品質病だったのか?」と次々と質問を浴びせてきた。