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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

ユニクロ、驚愕の過酷労働環境 低賃金で残業代過少申請強要、懲罰&罰金で労働管理

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
ユニクロ、驚愕の過酷労働環境 低賃金で残業代過少申請強要、懲罰&罰金で労働管理の画像1機能性に優れるユニクロの商品

「製造業者に対して適切な援助をし、労働環境の改善を促すこと」

 1月11日、香港を拠点とするNGO団体Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour(SACOM)が、ユニクロなどを世界で展開するファーストリテイリング(以下、ファストリ)に対して、ユニクロ製品を製造しているDongguan Tomwell Garment Co., Ltd.(以下、Tomwell社)および Pacific (PanYu) Textiles Limited(以下、Pacific社)両社の工場について、その劣悪な労働環境を告発し、ファストリに対しても改善に協力するように求めた。

 Tomwell社とPacific社は共に香港資本で中国本土に製造拠点を持ち、ユニクロ製品の製造を中心に行っている。SACOMの調査員は、昨年7月から8月にかけて一次情報を収集するため、2工場で一般労働者として働いた。さらに、工場従業員からの数多くの聞き取り調査も行った。この結果、(1)低基本給と長時間労働、(2)危険な労働環境、(3)厳しく懲罰的な経営方法、(4)代表を持たない労働者の存在という、主に4つの違法行為を行っていると告発した。

 SACOMの調査報告書には2工場の労働環境が克明に記載されている。中でも衝撃的なのは、過重労働と給与、そして懲罰システムだろう。

 Pacific社(広州)とTomwell社(東莞)の基本給はそれぞれ月額1550元および1310元だが、これは広州、東莞の最低賃金で、2013年の平均賃金はそれぞれ月額5850元と2505元だった。このため、両社は平均賃金並みにするために、時間外労働で帳尻を合わせているが、その労働時間はPacific社で134時間、Tomwell社で112時間となっている。
 
 中国の1カ月あたりの平均労働時間は174時間(8時間×21.75日)。Pacific社は1日平均11時間労働であり、休日は月1~2日程度、つまり毎月平均308時間労働となっている。一方、Tomwell社も1日平均11時間労働で1カ月の労働日数が26日程度のため、毎月平均286時間労働となっている。

 この308時間と286時間から中国の平均労働時間174時間を引いた分がそれぞれの時間外労働となるが、Pacific社では労働者の一部が「時間外労働の任意申請書」に署名することを要求されており、その申請書には時間外労働時間は119.5時間と記載されている。つまり、実際には134時間の時間外労働がありながら、119.5時間しか申請できない。

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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