VF甲府が本拠地を構える甲府市の人口は19万3437人(15年2月1日現在)、山梨県全体でも84万人弱にすぎない。大企業も少なく、常にスポンサー獲得に苦闘してきた歴史がある。かつてクラブ財政は破綻寸前で、筆頭株主だった山梨日日新聞グループの広告会社で常務を務めていた海野一幸氏が01年に社長に就任。同氏の画期的な取り組みで財政再建を果たし、経営を軌道に乗せた過去を持つ。
そして、クラブ経営が安定した08年秋に「プロサッカーのチーム運営がわかり、クラブ経営もできるプロフェッショナル」(海野氏)として招聘されたのが佐久間氏だった。
減収見通しの中、どう戦力を整えた?
J1で戦う各クラブには「収入格差」がある。14年7月に発表されたJリーグの開示資料によると、13年度の営業収入は、1位が浦和レッズの57億8600万円、2位は横浜F・マリノスの43億1500万円、3位が名古屋グランパスの42億2600万円だ。これに対して、VF甲府は18クラブ中16位で14億8100万円だった。
J1とJ2では注目度も違い、広告料の単価も異なる。同年度の平均営業収入はJ1クラブが30億7800万円、J2クラブが同10億9000万円と、こちらは約3倍の格差である。J1に残留したVF甲府だが、今季の営業収入は昨季よりも減収見通しだ。
「主な理由は、大口スポンサー企業が1社降りられたことと、観客動員数が多い国立競技場での試合がないことです。本拠地である山梨中銀スタジアム(通称「小瀬」)の観客動員数も微減となっています」(佐久間氏)
特定の親会社や有力大企業をスポンサーに持たないVF甲府は、多彩な販促活動で集めた予算内でチーム戦力を整えてきた。例えば小口広告の名物にウチワがある。観戦チケット2枚つきの1口6万2000円で300本作成し、表面に選手の写真が、裏面に会社や店の広告が入る。これには協力してくれるスポンサーも多いという。
経営に関しては海野氏の手腕が大きいが、Jリーグクラブの決算が公開された05年以降、9年続けて黒字なのはVF甲府と川崎フロンターレの2クラブだけだ。チーム戦力の強化費用も「カネがなければ知恵を出せ」で切り盛りする。
そんな状況でJリーグを戦い、「結果責任と説明責任」を問われるのがGMの宿命だ。「今季の最低限目標はJ1残留。昨季は1試合平均0.9点だった得点力を1.3点に上げて、成績を中位にしたい」と語る佐久間氏。外国人選手の年棒総額は昨季より35%減にして若返りを進めた。やむを得ず移籍となった日本人選手もいる。その狙いをこう説明する。