スカイマーク破綻を招いた下手なモノマネ&広報、LCCで唯一ピーチ好調の戦略的理由
サウスウエスト航空は、燃料価格のヘッジング【編註:価格変動に伴うリスクを先物取引を利用して回避すること】を競合に先駆けて採用している。確かに、これも利益を出すには重要な要素ではあるが、利益を上げながら低料金を実現するLCCのビジネスモデルという観点では、上の4つが基本要素として挙げられるだろう。
4つの要素は複雑に絡み合っている。例えば、大都市の2番手空港や中都市の空港をノンストップで飛ぶ。長距離路線は飛ばないから、機体はボーイング737の1種類で事足りる。また、数時間の飛行のため食事を出さずに済み、狭い座席でも乗客は我慢できる。目的地に着いたら乗務員が簡単な清掃をして新たな乗客を迎える。そのため20分以内に離陸できる。このように4つの要素は関連しており、1つでも欠けると全体に問題が出てくる。
競争戦略で有名な米経営学者のマイケル・ポーターは、マネしやすい企業(ビジネスモデル)とマネしにくい企業との違いを「活動マップ」を描くことで視覚的に説明した。つまり、その企業のビジネスモデルに特有な、すなわち競合他社との差別化に効果的な要素が互いに影響を与え合い、複雑に絡み合っていればいるほど簡単にはマネができない。LCCの場合、顧客サービスを排除すれば成功するというわけでもなく、機体を1種類にすればそれで成功するというわけでもない。4つの要素は互いに影響を及ぼし合い、全体として頑強なビジネスモデルを構築するのだ。
日本の航空規制がLCCの成長を阻害
サウスウエスト航空は、航空業規制緩和が進むとともに路線を拡大して成長していった。日本の場合は、86年以降、段階的に規制緩和政策が進められているとはいえ、制約はいまだに多々存在する。
例えば、空港における制約。日本のLCCでピーチだけが好調なのは、ピーチが関西国際空港を拠点としているからだといわれる。他の2社の主要拠点は成田空港。関空は24時間運営だが、成田は騒音問題の影響で夜11時から翌朝6時までは発着ができない。しかも、混雑する空港だ。1路線で安定的な黒字を出すには1日4往復(8便)の運行が必要とされるが、成田を拠点とするバニラやジェットスターはせいぜい3往復6便しかない。そのうえ午後11時の門限に遅れれば、翌朝の初便が欠航となる。
24時間利用可能な関空を拠点にしたピーチは、12年の就航から1年間で平均定時出航率は83%でLCCトップ、欠航率も大手並みの1%。当然のことながら利用率も増え、14年の平均搭乗率は83%と極めて高い。