Gunosyのサービス開始は13年1月だが、収入源の広告の配信を始めたのはその年の11月なので、13年5月期の売上高は0円。テレビCMを14年3月に開始して広告宣伝費が14億円以上とかさみ、14年5月期の売上高は3億6000万円で最終損益は13億9300万円の赤字だった。しかし東証マザーズは赤字企業でも上場できる。
15年5月期決算の業績見通しは、売上高が前期の約8.4倍の30億400万円で、経常利益が500万円、最終利益が500万円で黒字に転換する見込み。15年5月期の第2四半期決算は、売上高は12億7700万円だが最終損益は3億円の赤字で、それを下半期で500万円の黒字にもっていくとしている。
広告収入の基盤になるダウンロード数は、14年8月に500万、15年1月に800万を超えて順調と会社は説明しているが、それでも「薄氷の黒字化見込み」である。資本金10.23億円の会社がその約10倍の103.3億円の資本を吸収するので、15年5月期の1株当たり利益(EPS)見込みはわずか30銭しかない。とはいえ、長短の借入金などの負債を抱えておらず現預金が10.5億円あり、現状の自己資本比率は80%以上と高い。
また、上場前のベンチャーキャピタル(VC)の保有株比率が14.43%と高いのは懸念材料。主幹事証券会社・野村系のジャフコのそれは10.16%の213万株で、しかも売却停止期間90日を定めたロックアップ条項がついていない。主幹事証券系のVCとはいえ、いつ売るかわからない勢力で、投資家はこれをどう見るだろうか。
新規上場する4月28日はGunosyだけでなく、同じ東証マザーズへほかに2社が上場するという巡り合わせの悪さもある。初値>公開価格の白星にするには、当日の投資家の資金が分散されるため不利になる。
●競争が熾烈な、スマホ向けニュースサイト・アプリ
現在、スマホ向けニュースサイト・アプリは乱立気味。総合系でもヤフーニュース、ライブドアニュース、アメーバニュースなどがあり、それに新聞、放送、通信社などの大手メディア系が加わる。ビジネスやエンタメなどジャンルを絞ったニュースサイトも数多く、競争は熾烈だ。Gunosyの「情報キュレーションアプリ」のようなモデルも模倣される恐れがある。
ダウンロード数は900万を超えているが、ライバル的存在のスマートニュースは公称1000万。「Gunosy5000万都市構想」というビジョンを掲げ、将来は配信情報をニュース以外にも大きく広げ、商品やサービスの予約、購買もできるようにするというが、具体像は見えてこない。
このように懸念はいろいろあるが、「野村が主幹事の新規上場は黒星が多い」「gumiで評判を落とした」という汚名をなんとかして返上すべく、野村證券も証券業界の盟主のプライドをかけ、Gunosyの新規上場には力を入れて取り組むことだろう。