半導体市場成長の一方、なぜ半導体「製造装置」市場は成長できないのか 現状と展望分析
この両社は、13年9月に経営統合を発表した。その時は14年後半に統合する予定だった。ところが、世界8カ国の地域での独占禁止法関連の審査に時間がかかっているため、統合は今年6月30日になるという。これで3回目の遅延である。本当に統合できるかどうか、疑問視する声も聞こえてきている。
それはさておき、東京エレクトロンとアプライド社は多数の装置を開発・販売しているが、それぞれ、(1)~(4)のどの装置群に属するだろうか(図7)。成長性の高い装置を有しているだろうか。
まず、東京エレクトロンには、ケース(1)に属する装置として洗浄・乾燥装置がある。ただし、世界シェアは18%と高くはない。ケース(2)に属する装置としては、コータ・デベロッパ(世界シェア1位)、ゲートエッチング装置、絶縁膜エッチング装置(同1位)がある。
今後成長が期待できる装置として、洗浄・乾燥装置と絶縁膜エッチング装置を持っていることが強みである。
一方、アプライド社は、ケース(1)に属する装置としては、高電流イオン注入装置(同1位)、ウエハ検査装置がある。ただし、ウエハ検査装置の世界シェアは6%しかない。ケース(2)に属する装置としては、ゲート、絶縁膜、メタルのエッチング装置、および中電流イオン装置(同1位)がある。ただし、各エッチング装置の世界シェアは高くない。
アプライド社は、各種CVDやスパッタリングなど成膜装置に抜群の強みを持っている。ところが、すべての成膜装置はケース(3)、つまり今後成長が期待できない装置群に属している。その他、シェア1位のCMPもランプアニールもケース(3)に属する装置である。
つまり、アプライド社は、15種類もの装置を開発・販売し、そのうち8種類が世界トップシェアである。ところが、成長が期待できる装置が少なく、世界シェア1位の装置の多くがケース(3)に属する装置なのだ。
結局、この経営統合は、東京エレクトロン側から見ると誤算だったといえるのではないか。もし本当に経営統合が実現すればの話だが。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)