一方、東海岸では、東海道新幹線を運営するJR東海が、ワシントンからニューヨークを経てボストンに至る「北東回廊」をリニアで結ぼうという壮大な目標を掲げている。これも前々から安倍首相が直接、オバマ米大統領に提案したり、米国の要人を山梨県の実験線に招いたりするなど、長期的な視野に立って戦略を練っている。
なぜ、アメリカか。その理由は、同国で実績をつくれば「ショーケース」となって世界が注目し、日本の高速鉄道技術の世界展開への道が開かれるからである。長期政権となりつつある安倍政権には、米国と強固な同盟関係を確認し、米国内で日本を再評価する機運が出てきたタイミングをとらえて、日本の優れた技術を認識してもらいたいという願いもある。
高速鉄道の話題にわく国内
日本国内でも最近、高速鉄道の大きな話題が続いている。昨年秋の東海道新幹線50周年、リニア中央新幹線の着工、そして3月14日の北陸新幹線の開業などである。これまで東京から物理的にも心理的にも遠かった金沢や富山に3時間足らずで行けるようになった。例えば東京から金沢へは最速で2時間28分で行け、以前と比べると隔世の感がある。これだけ移動時間が縮まると、観光客やビジネス客の往来が一気に増え、経済への波及効果は非常に大きいといえる。
このように、地域に大きなメリットをもたらす高速鉄道は、まさに日本の「お家芸」である。正確で安全に運行し大量輸送が可能で、さらに省エネルギー効果も優れている。安倍晋三内閣は高速鉄道技術の海外への輸出を政府の成長戦略の一つと位置づけ、安倍首相自身が外遊する先々でトップセールスを行って日本の鉄道技術を売り込んでいる。
世界には高速鉄道の導入計画を立てているところも多く、潜在的な需要は大きい。日本の国土交通省がまとめた資料によると、世界で高速鉄道の整備を計画している国・地域は、アジア・オセアニアでは、台湾、ベトナム、タイ、オーストラリア、インド、インドネシア、ミャンマー、マレーシア、欧米は英国、スウェーデン、そしてアメリカ、ブラジルなど世界各地に広がっている。世界的に共通する都市化の流れにどう対応するかという問題や、環境対策など共通した課題も多く、高速鉄道にそうした問題の解決のヒントを見いだしたいと考えているからである。