そしてさらに、同一チェーンのコンビニがいくつも目と鼻の先で営業しているケースも少なくない。中でもファミマは顕著で、例えば東京・中野駅前には道路を挟んで向かい合わせに店舗があり、渋谷の道玄坂を上っていると徒歩数分内に6店舗も目にすることができるほど密集しており、こうした“ファミマ密集現象”はしばしば話題になることもある。
一見、同一チェーンの店舗が密集して営業すると客を奪い合うかたちになってしまいデメリットが大きそうだが、こうした“密集出店”にはどのような意図があるのだろうか。ファミマ広報担当者は次のように語る。
「ニーズがあるとしかお答えできないですね。過疎地でしたら店舗を集中させることはないのですが、都心だとたとえ向かい側に店舗があったとしても、出勤、通学の際にどちら側の道を通るのかという人の流れがあり、それぞれの店舗にお客様がいます。ですので、両店とも目標の日商が見込めると踏んだ上で出店しています」
いくら人が多い地域とはいえ、道路を渡って真向かいに店舗を構えるくらいならば、もっと地方への出店に力を注いでもよさそうだが。
「県内店舗数が100店に満たない地方都市にも積極的に出店していこう、という考え方もありますが、物流コストも考えなくてはいけません。東京都内の店舗数は今年2月末時点で1,954店舗と非常に多くなっていますが、まだまだニーズがあると感じています」(同)
コンビニ戦略の基本
しかし、新店の一日当たりの平均売上高(日商)は13年2月期の52.1万円から15年同期は46.0万円へと下降傾向にある。店舗間で利益の食い合いなどは起こっていないのだろうか。
「本部としては日商が確実に取れるという場所に出店しているので、それは積極出店の影響というよりは、商品力や店舗のクオリティの問題だと認識しています。さらに開店初年度の売上高がそこまででなくても、コンビニというのは3~4年経って徐々に出店エリアのお客様に定着していくものです。そのお客様にどのような価値を提供できるかが、コンビニ戦略の基本です。どんどん出店するドミナント合戦で競合他社より店舗数で上回るということを目標にしているわけではありません」(同)
いずれにせよ、ファミマ密集現象がなくなることは当分ないようだ。
(文=A4studio)