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舘内端「クルマの危機と未来」

CO2排出量の多いトヨタ“エコカー”ミライの正体 700万円の価値はあるのか?

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表

 また、首都高速道路への合流といった場面では、もう少し加速力が欲しい。アクセルを踏んだ時のモーターの反応も、もう少し鋭いといい。電気自動車の三菱自動車・i-MiEV(アイミーブ)、日産自動車・リーフ、独フォルクスワーゲン(VW)・e-up!、特に独BMWのi3に比べると、加速力、モーターの反応ともにいまひとつだ。

 その原因はひとまずおくとして、次は乗り心地である。これは悪くない。その第一の理由は、車体が重いことだ。1850kgというミライの車重は、メルセデス・ベンツ(ダイムラー)の上から2番目のグレードであるEクラスとほぼ同じである。皮肉な言い方だが、高級車として十分な重さである。

 しかし、重いといわれる電気自動車のBMW i3が1260kgであることを考えると、電池をわずかしか積まないミライが、なぜこれほど重いのか。

 昨年亡くなった自動車評論家の徳大寺有恒さんは、「高級車はデカくて、重いクルマのことだ」と、よくおっしゃっていた。重いクルマほど、乗り心地はどっしりとして良いものなのである。

 改善すべき点はあるものの、ミライに迫る完成度の燃料電池車は、世界広しといえどもほかにはないであろう。ここは開発者の努力を評価したい。

 次回、ミライの完成度、ドイツ高級車との比較、水素の充填方法などについて詳しく見ていこう。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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