2014年12月15日に発売されたトヨタ自動車の燃料電池車、MIRAI(ミライ)に試乗した。熟成された高級車の乗り心地というわけではないが、とにかく世界初の燃料電池車として一番乗りを果たした点は評価できる。ただし、723万6000円という価格に見合った乗り心地にするには、さらなる開発努力が必要だ。
実は燃料電池車が販売されたのは、ミライが初めてではない。すでに02年には内閣府にトヨタとホンダの燃料電池車がナンバーを付けて納車されている。内閣府以外にも販売されたが、公官庁や、燃料電池車や水素に関係する大企業にリース販売されたのみである。
今回のミライは、水素ステーションが使用場所の近くにあることが条件となっているが、希望すれば誰でも購入できる。つまり、一般販売という意味で世界初だ。豊田章一郎名誉会長の肝いりで燃料電池車開発に力を入れてきたトヨタとしては、なんとしても世界初の称号が欲しかったに違いない。
ただし、さらなる加速性能の向上、コストダウン、水素ステーションの整備など、課題は山積している。また、現在の水素製造方法では二酸化炭素排出量が多く、改善が必須だ。このように、課題は自動車本体にとどまらない。
パンチはないが、走りはスムーズ
試乗会場は、神奈川・横浜みなとみらいのヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル。試乗コースは、ここを拠点に近くの水素ステーションまでの道を往復するものであった。水素の充填も試してほしいというトヨタの配慮である。
近くには横浜・旭水素ステーション、同じく横浜市のDr.Drive上飯田店、そして東京都内のイワタニ水素ステーション芝公園の3カ所の水素ステーションがある。クジで芝公園の水素ステーションまで往復することになった。70kmほどの距離である。
発進は、電気自動車と同じモーター駆動なのでスムーズである。街中でおとなしく乗る分には不都合はなく、スムーズな発進と加速が楽しめる。燃料電池に空気を送るポンプの騒音が目立たないわけではないが、慣れれば大して気にならない。ただし、電気自動車の“しーん”と静まり返る室内に比べると少々騒がしい。
路面からのショックはかなりいなされているが、ドイツ高級車並みというわけではない。また、同じ価格帯のトヨタ車に比べてもショックは少しばかり大きい。