個人消費と輸出の落ち込みが響いて、四半期の実質国内総生産(GDP)の伸びがまたマイナスに陥った。これで安倍晋三政権発足以来の11の四半期のうち、5つの四半期がマイナス成長となり、一枚看板だったアベノミクスがすっかり色褪せてしまった格好だ。
背景にあるのは、足元で0.7%前後とされる潜在成長率の低さである。日本経済は地力がない。それゆえ、内外のちょっとしたショックで四半期GDPがマイナスに落ち込んでしまう構造になっている。
このままでは、先行きも悲観せざるを得ない。成長を支える大黒柱である個人消費は人口減少や高齢化社会の本格化を問題として抱えているし、企業の投資も生産性の低迷が続いており、そろって先行きの見通しが暗い。もちろん、財政再建という重荷を背負った政府支出も期待薄だ。まったく成長のけん引役が見当たらないのである。
ついに老舗のシンクタンクの中にも、必要な経済成長戦略(第3の矢)をこのまま掛け声倒れに終わらせると、「(東京オリンピック後の)2020年代後半、経済破綻の可能性」があるというショッキングな中期経済予測を出すところが現れた。
残念なことに、心中では外れてほしかった8月5日付本連載記事『GDP、再びマイナス成長か 円安不況の懸念濃厚 消費支出減、貿易赤字連続赤字…』が的中してしまった。内閣府が先週月曜日(8月17日)に発表した4~6月期の実質GDP(速報値、季節調整済)の伸びが、前期比0.4%減(年率換算で1.6%減)となったのである。四半期GDPがマイナスになるのは昨年7~9月期以来3四半期ぶり。2012年10~12月期に、第2次安倍晋三政権が発足してからの11四半期のうち、これで5回がマイナスに転落した格好なのである。
今回のマイナス転落の最大の原因は、個人消費が前期比0.8%減と4四半期ぶりにマイナスに転落したことだ。実質賃金の伸び悩みが続く中で、日本銀行の異次元金融緩和の副作用である円安に伴い食料品などの値上げが相次ぎ、消費者が財布のひもをきつく締めたことが響いた。
外需のGDPへの寄与度もマイナス0.3%と振るわなかった。輸入は国内消費の低迷に伴い前期比2.6%減となったものの、輸出が4.4%減とそれを上回る勢いで減ったことが足を引っ張ったのだ。特に、中国景気の下振れと、そのアジア全体への波及が輸出の壁になった。
予断を許さない状況
こうした状況に、弁明に躍起になっているのが政府である。甘利明経済再生担当大臣は四半期GDPの発表直後の記者会見で、「すべてとは言いませんが、一時的な要素はかなり大きいと思います。天候不順、特に6月は低温で降雨量が非常に多かったわけであります。そこで夏物衣料品や、あるいはエアコンを中心とする白物家電の伸びがかなり落ちました」とマイナスへの転落は一時的な現象だと主張したうえで、「7月下旬、そして8月は非常に真夏日が連続して、記録更新で、エアコン需要も随分伸びてきたわけであります。それらを勘案しますと、回復見込みはかなりあるのではないかと思っております」と楽観論を述べた。