20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が25、26両日、ブラジル・リオデジャネイロで開かれる。ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化を巡る溝が埋まらない中、G20は世界経済の課題にどのように対応していくべきか。元財務官でインド経済研究所の榊原英資理事長と、第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストに展望を聞いた。
◇摩擦への対応が課題=榊原英資・元財務官
―世界経済の課題は。
ロシアのウクライナ侵攻だけでなく各所で摩擦が起こり、ちょっと難しい局面に入ってきた。こうした摩擦にどのように対応するかが課題になっている。
―G20の役割は。
意見の相違がかなり激しくなり、共同声明が出せないことも時としてある。現状を分析し、どのような対応策を取れるか協議すべきだ。
―先行きの注目点は。
インドや中国、バングラデシュといったアジアの国々がこれからどのように成長していくのかに注目している。米国や欧州が世界経済をけん引してきた時代もあるが、「グローバルサウス」(影響力を強める新興・途上国)と呼ばれる国々の中でも、おそらくアジアの国々が引っ張っていくだろう。
―足元の円安をどう見ているか。
日本売りではなく、相対的な米国と日本の経済状況を反映した円安・ドル高であり、特に心配していない。状況が変われば円高に転換する可能性がある。米国の経済成長が弱まり、日本が引き続き強い成長をすれば、来年にかけて1ドル=130円くらいまでいくのではないか。
―4~5月には政府・日銀が円買い・ドル売り為替介入に踏み切り、7月にも介入したとの観測がある。
介入の効果は一時的で、断続的にやらない限り長続きするものではない。(介入原資となる)外貨準備には限りがあり、頻繁にはできない。対ドルで介入するならば米国にも影響があり、反対するような介入はできない。
◇何らかの答え出す努力を=西浜徹・第一生命経済研究所主席エコノミスト
―G20の課題は。
「米ドル一強」と言われる環境が続いたが、ドルの勢いにも陰りが出てきた。ここ数回のG20は、気候変動や飢餓、通商、投資といった地球規模で協調して合意すべき課題が山積する一方、有効性のある方向感が見いだせず、各国が言いたいことを言って終わっている。
―会議の存在意義が問われる。
ウクライナ戦争の問題などがあり、歩み寄るハードルが上がっている。一つのテーブルに皆が集まり、それぞれの認識を表明する場としての意義はある。何らかの答えを出すための努力をできないのかと思う。
―「グローバルサウス」の新興国によるG20議長国が続く。
新興国からすると、G20では先進国の意見が中心にあり、虐げられているという感覚を持っている国が多い。昨年の議長国であるインド、今年のブラジル、来年の南アフリカは「新興国の雄」と呼ばれる国。グローバルサウスの国々の意見をどう取り込み、中心に据えていくかが会議のポイントだ。
―G7各国は国内にも課題を抱えている。
自国の状況が国際協調の足かせになることは間違いない。ようやく米国と欧州で共同歩調が取れるようになってきた中、11月の米大統領選で再び国際協調の方向性の見えにくさが生まれる可能性がある。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/07/21-15:40)