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【寸翰啓上】日銀総裁に思う 時事総合研究所客員研究員 堀義男

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 日銀総裁はじめ各国中央銀行トップは金融政策運営を巡り、政治と正面から向き合う必要がある。ただ政治が選挙を経て国民の負託を受けているだけに、中銀の立場はどうしても弱い。

 米国のトランプ前大統領が金融政策運営に頻繁に口出ししたことが、中銀の政治からの独立が所与のものではない現実を物語る。「独立性」と呪文を唱えるだけでは何も期待できない。

 評価もうつろいやすく、1987年の世界的な株価大暴落「ブラックマンデー」やアジア通貨危機などを克服し、米経済の長期拡大に貢献した連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン元議長。金融政策の「マエストロ」(名指揮者)と称されたが、今では手腕に疑問も呈されている。

◇評価は一転

 日銀総裁では現在の植田和男総裁の6代前、三重野康氏がバブル経済退治に尽くし「平成の鬼平」と称賛された。だが日本経済が長期低迷すると、過度な金融引き締めが影響したと評価は一転した。2代前の白川方明氏は「金融緩和を出し惜しみするから円高に歯止めがかからない」と批判された。円相場は財務省所管で気の毒な面はあるが、国民の声にもっと単純でストレートに対応してほしかった気もする。

 黒田東彦前総裁も毀誉褒貶(きよほうへん)は激しい。2013年の就任直後に実施した異次元緩和で円高是正が進んでいた頃、「地方での会合の際、人の輪が総裁を取り囲んでいた」と日銀幹部に聞いた。

 だが16年導入のマイナス金利政策が不発で、むしろ円高に振れた折での地方会合では「参加者は総裁を遠巻きにしていた」という。

 4代前の速水優氏は「円は日本の実力を示す」との信念に基づく円高論者だった。任期中は円高是正を求める世論が強かったため、円高志向を隠し切れない発言に厳しい目が向けられていた。

 近年の総裁では3代前の福井俊彦氏が緩和、引き締めとも打ち出し方にメリハリがあった。一種ビジネスライクでもある政策運営に、ある日銀幹部とは、福井氏の出身地から「大阪商人風」と言い交わした。

◇言い訳なし

 金融政策運営では万国共通して、利上げ局面で中銀と政治との間に緊張が走りやすい。植田総裁が3月に見直した異次元緩和政策は11年も続いていた上、故安倍晋三元首相の看板政策でもあり、ハードルは一層高かった。

 植田総裁自ら「さまざまな幸運にも恵まれた」と語ったように、海外発インフレが「根雪のように固い」と目されていたゼロ近傍に張り付く物価を溶かし、政策見直し環境を前進させた。

 また日米の金融政策が真逆で低金利の円を売り、高金利のドルを買う動きが長期化。原材料・部品を海外に頼る中小企業が円安による輸入価格上昇に音を上げ、国民も食料品やエネルギー価格高騰に不満を募らせた。政治が注文を付けるのは難しかったのも幸いした。

 歴代総裁は、在任中は無論、退任後も批判や評価に言い訳も反論もしない。植田総裁も異次元緩和見直し決定後の記者会見で、円安は足元で見る限り物価に大きく影響していないとの部分だけ切り取られ、「円安容認だ」と市場の円売りを浴びた。発言全体の趣旨は全く違っていたが、植田氏もこの件で無言を貫いている。

 中でもこの激職を2期10年務め、2期目終盤には異次元緩和への痛烈な批判を受けてもぶれなかった黒田前総裁。「鉄人」ぶりは近年の総裁の中でも際立っている。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/07/23-06:00)

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