「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/11月22日号)は『株 不動産 円安 日銀バブルが来る!』という特集を組んでいる。「誰もが意表をつかれた日本銀行による追加緩和。株価が7年ぶりの高値を更新する中、永田町は消費増税の先送り解散・総選挙に走る。急変する政治経済の行方を検証する」という内容だ。
今回の特集は、日銀が10月31日の金融政策決定会合において決定した電撃追加緩和が引き起こすバブルについて鋭く迫っている。今回の緩和は、マネタリーベースの年間の増加幅を10~20兆円ほど拡大。長期国債の買い入れ残高を30兆円増加、買い入れる国債の平均残存期間を7年程度から7~10年程度へ、ETF(上場投資信託)の購入を年間1兆円から3兆円に増額などだが、実は今回の緩和の意味は、同日に発表された年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率の拡大とセットで見ると、よくわかるという。
GPIFは約130兆円の年金資産を運用しているが、この運用比率の変更を行ったのだ。変更の内容は、国内債券を60%から35%に引き下げ、国内株式を12%から25%に、外国株式を12%から25%に、外国債券を11%から15%にそれぞれ引き上げる。日本株購入は10兆円だ。
つまり、GPIFが持つ国債を日銀が市場を通じて買い、代わりに国債を手放したGPIFは株式市場で国内株式を購入するという流れが出来上がったのだ。
「今回の新資産構成を見ると、単純計算で24兆円の国内債券を売却していく必要がある(償還含む)。これほどの大量の売りが出ると、国債の価格下落(金利上昇)などの影響が出かねない。ここで見事に符合したのが、日銀の追加緩和である。追加緩和で日銀は、長期国債の買い入れを年間約30兆円増額する。GPIFの売りを十二分に消化できる規模だ」(同特集より)
これまでは日銀は銀行から国債を買っていたが、国債売却代金は日銀の当座預金に「ブタ積み」されるだけだった。これから、GPIFは国債売却代金を株式に換える。
「結局のところ、日銀が国債を媒介にしながらマネタリーベースを株式市場に流し込んでいることと同じなのである」(同)
日銀のETF購入増額も含め、合計13兆円のマネーが株式市場に流れ込むのだ。その規模は日経平均株価を1万395円から1万6291円へと押し上げた2013年の外国人投資家の株式買越額(14兆円)とほぼ同じレベルで、資産バブルが誘発されるというわけだ。
日銀とGPIFが買う株式とは?
では、どんな株式が買われるのか。
日銀は次のようにETFを購入する。
「日銀は4年前のETF買い入れ開始以来、日経平均に連動するタイプとTOPIX(東証株価指数)に連動するタイプの2種類のETFを購入してきた。日経平均連動型ETFは、日経平均を構成する225銘柄を、原則として等株数ずつ購入するのだが、同じ100株でも株価が違うため、投資する金額は双日の2万円弱からファーストリテイリングの400万円超まで大きな差がある」(同)
「また、追加緩和を機に日銀はJPX400指数(JPX日経400インデックス)に連動するETFも購入対象に加えた。JPX400指数は主要400社の株価動向を表し、東証と日本経済新聞社が共同開発した。時価総額や市場での売買高に加えて、株主持分利益率(ROE)も採用基準に含めた点に特徴がある」(同)
日銀が購入することで、400銘柄にはETF買いによる上昇圧力がかかるだろう。なかには、JPX400指数に採用されながら、日経平均には採用されていない銘柄もある。そのような銘柄は買いのチャンスかもしれない。
次に、GPIFは何を買うのか?
「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/11月22日号)の特集『買っていい株237 買ってはいけない株163 急変相場を見極める!』によれば、キーワードは「スマートベータ」だという。
スマートベータとは「何らかの“戦略”に基づいて、銘柄を選定し、ウェイト付けするのが特徴だ。例えば、企業の財務指標や業績を基準として、より高い収益を、安定的に上げられる銘柄構成を目指す。(略)市場平均を超えることを目指すという意味でアクティブ型だが、指数への連動を目指すという面ではインデックス型であり、従来のアクティブ運用とも異なる。いわばその中間だ」(同特集より)
新たな運用で採用するとした指数はJPX400のほか、企業規模に着目した「野村RAFI基準インデックス」「S&P GIVIジャパン」だ。こうした指数は、「TOPIXのような時価総額を基準とするのではない、“本当の意味での大企業”」がわかるのだという。このような銘柄選びは参考になるだろう。
(文=松井克明/CFP)