ギリシャ財政危機でドイツ儲かる?ギリシャのユーロ離脱とロシア接近を防ぐ外交かけひき?
国内系、外資系運用会社を渡り歩き、株式投資の最前線に20年以上携わった後、現在はマネックス証券チーフ・ストラテジストを務める広木隆氏が、「経済のミカタとカラクリ」をわかりやすく解説します。
1月に総選挙が行われ、新政権が誕生したギリシャ。現在、債務問題に揺れているが、ヤニス・バルファキス新財務相が「男性的な魅力が漂う」として、ドイツで大人気のようだ。2月10日付ロイター記事によると、テレビキャスターが「バルファキス財務相は疑いなくカリスマ性に満ちた人物で、映画『ダイ・ハード6』に出てきそうだ」と発言、ファッション雑誌も「貧しくてもセクシー」と題した記事で「彼のクールなスタイルは見逃せない」と注目しているという。
EUは、先月行われたユーロ圏財務相会合で、2月末に期限が切れるギリシャへの金融支援を最大4カ月間延長することを決めた。ギリシャから提出された財政構造改革案にマーケットも反応し、欧米の主要な株価指数は最高値を更新した。しかし、この決定はとりあえず問題を先送りしただけであり、根本的な問題は何ひとつ解決していない。
IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事が言ったように、これはゴールではなく「妥当な出発点」にすぎないのだ。2月末だった期限が4カ月延びたということは、6月にまたこの騒ぎが待っているのだろうか? いや、実はもっと前にハードルが待っている。
EUとギリシャは4月末までに財政構造改革の詳細で合意することになっているが、ユーロ圏財務相会合では「ギリシャ当局に対して、より発展的で広範囲な改革リストの検討を求める」という動きがあった。要するに、「もっと具体的に踏み込め」と要求しているのだ。一見、ギリシャは時間を稼いだように見えるが、猶予はあまり残されていない。
現在、ギリシャがユーロを離脱する可能性は少ないと見られているが、仮にそうなった場合に何が起こるか、想定してみよう。ギリシャの通貨はユーロからドラクマに戻るが、そのドラクマはすぐに大暴落し、急激にインフレーションが進むハイパーインフレが起こる。物価が急上昇するので、一般市民は生活必需品も手に入りにくい状況になるだろう。
また、ギリシャがユーロ離脱を決定するためには国民投票が必要だが、それ以前に大規模なキャピタルフライト(資本逃避)や銀行の取り付け騒ぎが起こる。そして、それを防ぐには預金封鎖をするしかない。そんな事態はギリシャ国民も望んでいないだろうし、そもそも新政権はユーロ残留を明言している。最終的には、EUの支援の条件である財政緊縮策を受け入れざるを得ないだろう。