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嵐の“ラストイヤー”はどうなるのか…アラフェスもカウントダウンも今年は開催不可能か

文=峯岸あゆみ
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2014年にジェイ・ストームより発売された『ARASHI アラフェス’13 NATIONAL STADIUM 2013』のDVD版ジャケット。

「2020年12月31日をもってグループとして活動を休止する」

 相葉雅紀松本潤二宮和也大野智櫻井翔……のメンバー5名が、公式サイトにアップされた動画を通じて、この発表を行ったのは2019年1月27日のことだ。その夜、全員が揃った記者会見が行われ、活動休止する旨が改めて多数の報道陣に伝えられた。また、活動休止を申し出たのは大野智で、「自由な生活がしてみたい」というのがその理由であることが明らかになった。

 その後、関係者は、2020年の大晦日までの約2年間、この国民的アイドルグループに、これ以上ない豪華絢爛な花道を用意することになる。

 まず、2019年の5月31日、メンバーが「NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送スペシャルナビゲーター」に就任することが発表される。世界的ビッグイベントに深く関わることで、ラストイヤーである2020年が一段と華やかになるのは明らかだった。

 6月26日には、20周年記念アルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』がリリースされる。また、これに連動して、これまではめったに出演しなかった各局の音楽特番などに続々と顔を出し、ファンを喜ばせた。

 また、7月から、「ARASHI EXHIBITION “JOURNEY” 嵐を旅する展覧会」なる展覧会を全国各地で開催。8月24~25日には、五度目となる『24時間テレビ』(日本テレビ系)のメインパーソナリティを務めている。

ジャニーズの慣例を打ち破るウェブ展開

 ジャニーズ事務所はこれまで長い間、インターネット上の活動には慎重すぎるほど慎重で、所属タレントの顔写真を掲載することすら許されない状況が長く続いていた。ところが、創業者であるジャニー喜多川氏の他界(2019年7月9日)に伴い、ジャニーズ事務所側の体制も変化し、このいささか保守的なウェブ対応も変化を見せ始める。

 10月9日に嵐の公式YouTubeチャンネルが開設され、デビュー曲「A・RA・SHI」ほか5曲のミュージックビデオが公開されるとともに、その5曲の定額制ストリーミング配信がスタートしたのだ。そして11月3日には、メンバーがYouTubeのライブ配信で、Facebook、Twitter、Instagram、TikTok、Weiboの各SNSアカウントの開設、過去の全シングル曲のデジタル配信、サブスクリプション配信の開始などを発表する。この怒涛のウェブ展開は、それまでのジャニーズ事務所では考えられない画期的な出来事だった。

 11月9日、嵐は東京・千代田区の皇居前広場で行われた「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」に出演し、奉祝曲『Ray of Water』の第3楽章『Journey to Harmony』を歌唱。まさに、“国民的アイドル”の称号に相応しい大役を果たした。

 翌10日、嵐は海の向こうに飛んだ。チャーター機で、ジャカルタ(インドネシア)、シンガポール、バンコク(タイ)、台北(台湾)のアジア4都市を巡り、ファンへの謝意と、SNSアカウントや音楽配信のスタートを伝える会見を行っている。

 12月になると、21日に「国立競技場オープニングイベント ~HELLO, OUR STADIUM~」に出演。25日には「日中文化・スポーツ交流推進年親善大使」への就任と、北京公演の開催の計画が報道される。そして、大晦日はNHK『紅白歌合戦』に白組の歌手として出演(11回目)。2年連続3度目の大トリを務めた。また、同番組内では、米津玄師が作詞・作曲したNHK2020ソング『カイト』が発表される。番組内では、メンバーと米津の対面シーンや、真新しい国立競技場で同楽曲を5人が歌う映像が流れた。もちろん、その時、東京でのオリンピック、パラリンピックの開催が危ぶまれる事態になるなど、誰も予想しなかっただろう。

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コロナ禍を受け、嵐のYouTube公式チャンネルには、期間限定のライブ映像や話題となった“手洗い動画”など、さまざまなコンテンツがアップされている。(画像は嵐のYouTube公式チャンネルより)

ラストイヤーの計画がコロナでほぼ全滅

 嵐の2020年は、毎年恒例の「ジャニーズカウントダウンライブ」で始まった。『紅白歌合戦』の会場であるNHKホールを後にしたメンバーは、1月1日の0時25分頃に東京ドームのステージに立っていた。

 1月8日には、これまで特番として何度か放送されていたNHKの嵐出演番組『2020スタジアム』が、月に1度のレギュラー番組としてスタート。その後も、アニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)とのコラボ企画、過去のアルバム曲の配信など、2月上旬までは、スケジュールは予定通り進んでいた。しかし、その頃すでに、新型コロナウイルスの感染が世界的に広まりを見せていたのだった。

 ここから、嵐のラストイヤーは大きく狂いだしていく。まず、2月17日、4月に予定されていた、2008年の北京オリンピック、パラリンピックのメイン会場となった北京国家体育場(収容人数約8万人)での公演の中止がアナウンスされた。その時点では、日本国内ではまだコンサート、イベントが次々と中止に追い込まれていくような状態ではなかったが、中国本土で約2カ月先に大規模イベントを開催するのは、さすがにリスクが大きすぎたのだろう。

3月24日、IOC理事会で東京オリンピック、パラリンピックの1年程度の延期が決まり、同30日に、オリンピックは2021年7月23日~8月8日、パラリンピックは2021年8月24日~9月5日という、延期後の正式日程が発表される。これによって嵐は、自分たちの活動終了タイミングも合わせて繰り下げない限り、NHKの東京オリンピック、パラリンピック放送におけるスペシャルナビゲーターを最後まで務めることができなくなってしまったのである。

アラフェスもカウントダウンも開催は無理?

 そして4月14日には、国立競技場で5月15日、16日に予定されていた「アラフェス 2020 at NATIONAL STADIUM」の開催延期が発表される。

 本当ならば地上波テレビの世界では、NHK、民放ともに、4月1日から五輪一色モードになり、NHKでは告知番組などが頻繁に放送され、その都度、が顔を出し、そこでは『カイト』が流されていたのだろう。しかし、ご存じのように現在、テレビは総集編、再放送、リモート出演番組ばかりになり。『2020スタジアム』の放送もまた途切れてしまった。

 仮に嵐が活動休止を1年延期させたとて、2021年夏の世界が、オリンピック、パラリンピックを開催できる状況となっている保証はどこにもない。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は現地時間の5月20日、“東京五輪は2021年の夏に開催できなければ中止とする”という見解を明らかにしている。

 では、仮にスペシャルナビゲーターの役割はジャニーズの後輩グループが引き継ぎ、嵐は予定通り年内で活動休止をした場合はどうだろうか?

 本来なら、オリンピック、パラリンピック終了後、活動休止前最後の大規模コンサートが行われただろう。ラストステージは、大晦日の『紅白歌合戦』の大トリだったか、もしくは、「ジャニーズカウントダウンライブ」で最後にファンに別れを告げて去っていくという展開もあったかもしれない。

 しかし、とりあえず現下の緊急事態宣言が解かれても、秋以降に再び新型コロナウイルス感染が拡大する可能性も指摘されている。そのため、ステージ上に多数の“密”が発生する『紅白歌合戦』は通常の形式での放送が困難だと判断され、ぐっと地味な演出となるであろうという予想もある。もちろんそうなれば、東京ドームでのライブ開催も難しいだろう。当然、延期になっている「アラフェス」を、デビュー記念日である11月3日の“嵐の日”前後に行うという線も厳しいのではあるまいか。

 そうなればジャニーズ事務所としては、大きなビジネスチャンスを逃したこととなる。アラフェスは無観客で開催され、それを有料ライブ配信する……といった計画もあり得る。だが、嵐の人気や活動実績を考えれば、それでは、あまりに寂しすぎる。かといって、活動休止を延期という選択肢を関係者が望んでも、自由な生活を求める大野智をはじめ、批判の声がありながらも結婚に突き進んだ二宮和也も含め、嵐の各メンバーがそれを承諾するのか、という問題もある。

「Twenty★Twenty」に参加した嵐

 記念すべきラストイヤーのプランが狂ってからの嵐は、ジャニーズ事務所所属グループによる新型コロナウイルス感染拡大防止の支援活動『Smile Up! Project』の一環として、ジャニーズ事務所の他グループのメンバーとの期間限定ユニット「Twenty★Twenty」を結成するなど、前向きな展開もある。公式YouTubeチャンネルでは、メンバーがリモート出演で元気な姿を見せている。

 だが、グループとしての今後については、2020年の大晦日まであと7カ月強となった5月末現在、なんの発表もなされていない。いや、現在の状況下では、アナウンスしたくてもできないのだろう。果たして、ラストイヤーの嵐はどうなるのだろうか。

峯岸あゆみ/ライター

峯岸あゆみ/ライター

CSと配信とYouTubeで過去のテレビドラマや映画やアイドルを観まくるライター。ベストドラマは『白線流し』(フジテレビ系)、ベスト映画は『ロックよ、静かに流れよ』(1988年、監督:長崎俊一)、ベストアイドルは2001年の松浦亜弥。

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