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現役マネージャーが語る、芸能ニュース“裏のウラ”第20回

木村拓哉はなぜ復活を遂げたか?その人間力、ほの見える“過去の盟友”飯島三智氏の手腕

芸能吉之助(現役芸能プロマネージャー)
木村拓哉はなぜ復活を遂げたか?その人間力、ほの見える“過去の盟友”飯島三智氏の手腕の画像1
4月16日の放送開始日の延期の案内が掲示されているドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)の公式サイト(2020年5月16日時点)

 どうも、“X”という小さな芸能プロダクションでタレントのマネージャーをしている芸能吉之助と申します。
 
 新型コロナウイルスの影響で、4月スタート予定だったドラマのほとんどが延期になっていますが、木村拓哉さんの主演ドラマ『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日系)もそのひとつ。2年前に平均視聴率15.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下すべて同)を記録した人気ドラマの続編で、「これはおもしろそうだな」と僕も期待してたので本当に残念です……。現在は前シリーズの「傑作選」が再放送されているので、それを見つつ、放送開始を楽しみに待ちたいと思います。

 しかし、昨年からの“キムタク復活劇”はすごかったですね!

 正直、2016年のSMAP解散騒動で、それまでの「キムタク」ブランドは崩壊してしまったと思うんです。彼が『HERO』シリーズ(フジテレビ系、2001年〜)で演じていたような、飄々としているけど実はキレ者で、男気があって、誠実で……といったキムタクのパブリックイメージが、いったんここですっかり崩れてしまった。世間に衝撃を与えたあの“見せしめ謝罪会見”によって完全に“裏切り者”のイメージがついてしまい、そこから、キムタク神話にいろいろケチが付き始めたんですよね……。

 連ドラで主演すると「ゴリ押し」「何を演じてもキムタク」と叩かれ、主演映画の興行成績がイマイチ振るわないと「大コケ」とメディアはいちいち大騒ぎ。とはいっても、SMAP解散後に放送された主演ドラマ『A LIFE〜愛しき人』(TBS系、2017年)の平均視聴率は14.5%、冒頭で挙げた『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日系、2018年)は15.2%と、視聴率は高かった。もちろん、「大ヒットが当たり前!」のキムタクドラマとしては物足りなかったのかもしれませんが……。

「何を演じてもキムタク」の功罪

 そこにきて、この数年のモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのが、昨年の『グランメゾン東京』(TBS系、2019年)ですよ! あのドラマは本当に素晴らしかった。木村さんの底力を見せつけられました。平均視聴率は12.9%と、数字だけ見れば低く思えますが、このクールのドラマのなかでは、『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系、主演/米倉涼子)の18.5%、『相棒 season18』(テレビ朝日系、主演/水谷豊)の14.8%についで3位。ドラマ業界が全体的に不振に陥っていた昨年の状況下では、上々といってよい結果でしょう。

 ドラマの内容は、問題を起こして地位や名声などすべてを失った天才シェフが、もう一度ミシュラン3つ星を狙い開業するというストーリー。鈴木京香さん演じる相棒シェフをはじめ、かつての仲間であった沢村一樹さん、及川光博さん、玉森裕太くんなど、一人ずつ仲間を集めていき、ライバルの妨害に苦しみ、土壇場で大逆転……と、よくできた少年ジャンプマンガのようで、とてもわかりやすいし、スカッとするストーリー展開でした。それを、ずらりと揃った演技派の俳優さんと、『アンナチュラル』(TBS系、2018年)などを手がけ、深みのある演出に定評がある塚原あゆ子さんらの演出陣によって、極上のエンターテインメントに仕上げていました。
 
 木村さんの演技を評するときに、「何を演じてもキムタク」とはよくいわれますが、このドラマの彼は、良い意味で、「やっぱり、何を演じてもキムタク」だったと思います。みんなが見たい“キムタク”をめちゃくちゃしっかり見せてくれて、その上で「キムタクってこんなにカッコイイんだ!」ということを見せつけた。現状の木村拓哉がどう見られているかをわかったうえで、「ちょっとダサい」と思われている“キムタク”を受け入れていた。ドラマの中で鈴木京香さんが木村さんを「おっさん」呼ばわりするのが話題になっていましたが、過去の栄光にすがるのでなく、今の自分で勝負するしかない主人公と現実の木村さんとが重なって、昔から木村さんを知っている世代はもちろん、今の若い世代まで、新たな木村さんの魅力に気づかされた。

 世間に定着した自分のイメージを変えたくて、それまでとまったく異なる役柄を演じることはよくあること。でも、そのイメージに真正面から取り組むことで、逆にそれまでの殻を破ることができた、という稀有なパターンだと思います。

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2020年1月4日、5日にフジテレビ系にて放送されたスペシャルドラマ『教場』の公式サイトより。

続編が確実視されるドラマ『教場』の素晴らしさ

 そして『グランメゾン東京』の最終回の余韻が消えぬうち、年明け早々に放送されたスペシャルドラマ『教場』(フジテレビ系、2020年1月4日、5日)。このドラマで、木村さんは完全復活したといえるでしょう。このドラマで木村さんが演じたのは、冷徹な警察学校の教官。警察官の適性がないと判断した教え子には、すぐに退校届を突きつけ追い詰めるという、インパクトのある役柄でした。白髪、義眼という強烈なビジュアル、抑えたトーンで冷酷な発言をする役柄に、「えっ、この人キムタクなの!?」と驚く人も多かったと思います。

 ストーリーは、工藤阿須加さん、川口春奈さん、林遣都さん、大島優子さんら訓練生を演じる若手俳優たちのエピソードがメインで、木村さん演じる鬼教官は、それを見守っているという形。とにかく木村さんのカッコよさを押し出してくるこれまでのドラマとはまったく違うアプローチでした。それでも、木村さんの存在感が全編にわたってこちらを圧倒してくる。『グランメゾン東京』とはまったく異なる形で、木村さんの役者としての底力を痛感させられるドラマでした。

 出演者としてクレジットされていた人気俳優たち(三浦貴大さん、伊藤健太郎くん、上白石萌歌さんら)が、セリフなしで最後の1カットのみ登場…といった中途半端なものだったことからも、これは絶対第二弾があるでしょうね! スペシャルドラマや連続ドラマ、映画化などの可能性もあると思います。

歌いまくったSMAP楽曲

 そして、その直後に発売されたソロアルバム『Go with the Flow』(2020年1月8日発売)も、オリコン週刊アルバムランキングで初週売上12.7万枚を記録、初登場1位を獲得しました。稲葉浩志(B’z)や川上洋平([Alexandros])、森山直太朗小山田圭吾(コーネリアス)ら錚々たるアーティストが楽曲提供しており、さもありなんといった感じですが、きっちりと“ヒットしてる感”を作るところまで行き着いた。まあ、2月に行ったライブツアーで、SMAPの楽曲を歌いまくったのはどうかと思いますけど(笑)。「新しい地図」の3人は歌ってないのにね…。あれには、モヤモヤさせられたファンも多かったでしょうね。

 とはいえ、『グランメゾン東京』『教場』がうまくいってなかったら、きっとこのアルバムリリースの段階でもっと叩かれていたはず。でも、ちゃんとそこまで「木村拓哉、復活してきたな」という空気をしっかり作ってきて、アルバムのヒットまで繋げた。「やっぱりキムタクって人気あるよね」と世間が納得するところまで持ってきたわけです。これが、木村さんの底力、そして、彼を支える周囲のスタッフたちのマネジメント力ですよ!

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2015年9月にビクターエンタテインメントより発売されたSMAPの55枚目のシングル「Otherside/愛が止まるまでは」の通常版ジャケット。SMAPの事実上のラストシングルとなった。

いまはそばにいない飯島三智マネの手腕

 SMAPの解散騒動以来まとわりついていた、ダークなイメージやアレコレ言う外野の声を、2本のドラマとソロアルバムで吹き飛ばしてみせた。これを、木村さんの天性の自己プロデュース力という人もいるけど、個人的には、若い頃から彼をここまで育て上げてきた飯島三智氏(元SMAPマネージャー)の力が、やはり大きいのだと思います。もちろん彼女は今は木村さんのそばにはいないけれど、彼女と木村さんが一緒に作り上げてきた「キムタク」を支えてくれる人たちは、まだまだたくさんいる。それは事務所のスタッフはもちろん、ドラマのプロデューサーやスタッフたち、そして共演する役者さんたちもそうなんですよ。

『グランメゾン東京』なんかは、見ていても、役者、スタッフ、「みんなで木村拓哉を盛り立てよう」という雰囲気が伝わってきた。やっぱり、いい座長なんですよね。ぼくもちょっとだけ一緒にお仕事をしたことがあるけど、本当に男気があってスタッフを大事にする「カッコイイ兄貴」なんですよ。まあ、演技をしていないときでも常に「俺、キムタク」な身振り手振りがちょっと恥ずかしいんですが(笑)。でもみんなに慕われている。

“大スター”というのは「この人のために頑張りたい」、そう周囲に思わせる人なんだなぁと、マネージャーの仕事をしていて実感しています。
 
 木村さんは5月8日にはインスタグラムの公式アカウントを開設したことでも話題になり、1日足らずですでにフォロワー数は78.7万人を突破。年内のファンクラブ設立も予告しており、次はどのような一手を見せてくれるのか……ぼくのようなマネジメントする側の人間としても、木村さんのこれからに興味津津です。

(構成=白井月子)

芸能吉之助/芸能マネージャー

芸能吉之助/芸能マネージャー

弱小芸能プロダクション“X”の代表を務める、30代後半の現役芸能マネージャー。趣味は食べ歩きで、出没エリアは四谷・荒木町。座右の銘は「転がる石には苔が生えぬ」。

Twitter:@gei_kichinosuke

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