ジャニーズ新体制でも「閲覧不可」…幻のたのきん、少年隊、光GENJI主演映画を追う
長らく封印されていた「昭和ジャニーズ映画」が続々と解禁されている! 近藤真彦、シブがき隊の主演作がテレビ放送され、郷ひろみ、フォーリーブス、男闘呼組らの主演作が東京のミニシアターで上映される。
かつてVHS化された作品はあるが、その後はDVD化、Blu-ray化されることはなく、テレビや動画配信サービスでの鑑賞機会もゼロ、名画座で上映されることもなかった昭和のジャニーズ映画たち。一部ではあれどこれらが解禁されたことは、ジャニーズ事務所の体制の変化と無縁ではないのだろう。
解禁された作品については【前篇】で取り上げたが、今回の【後篇】では、「それでも封印されたまま」の昭和ジャニーズ映画をクローズアップしていきたい。
【前編】「タッキーとジュリー社長の新方針?…封印されていた幻の「昭和ジャニーズ映画」解禁の謎」
田原俊彦・野村義男・近藤真彦…大ヒット連発のたのきん映画はもう観られない?
まず、ジャニーズ事務所史上最大の功労者といえる、田原俊彦・野村義男・近藤真彦による「たのきんトリオ」が揃って出演した作品群「東宝たのきんスーパーヒットシリーズ」は、すべてがいまだ封印状態にあることを確認しておきたい。
「東宝たのきんスーパーヒットシリーズ」とは、以下の6作品を指す。
・近藤真彦主演『青春グラフィティ スニーカーぶる~す』(監督:河崎義祐、1981年)
・近藤真彦主演『ブルージーンズメモリー BLUE JEANS MEMORY』(監督:河崎義祐、1981年)
・田原俊彦主演『グッドラックLOVE』(監督:河崎義祐、1981年)
・近藤真彦主演『ハイティーン・ブギ』(監督:舛田利雄、1982年)
・田原俊彦主演『ウィーン物語 ジェミニ・YとS』(監督:河崎義祐、1982年)
・近藤真彦主演『嵐を呼ぶ男』(監督:井上梅次、1983年)
上記作品の多くに、ジャニーズ事務所の原点とされる映画『ウエスト・サイド物語』を意識したようなミュージカルシーンが挿入されている。まさに“ジャニーズイズム”を具現化したものだが、公開当時に青春時代を送っていた人々が、当時を懐かしんでこれらの作品を観ようと思っても、簡単には鑑賞できないのだ。
また、上記『ウィーン物語 ジェミニ・YとS』と同時上映だった唯一の野村義男主演作『三等高校生』(監督:渡邊祐介)、そして『嵐を呼ぶ男』と同時上映されたドキュメンタリー作『TOSHI in TAKARAZUKA Love Forever』(監督:井上梅次)、さらに、“脱たのきん”を狙った田原俊彦主演作『エル・オー・ヴィ・愛・N・G』(監督:舛田利雄、1983年)も、同じく鑑賞は困難であることも付言しておきたい。
現在も全員がジャニーズ所属の少年隊主演作『19 ナインティーン』までがなぜか封印状態
たのきん主演作が封印されているのは、田原俊彦と野村義男がすでにジャニーズ事務所を離れているゆえ肖像権が云々……と推察する向きもあるが、果たしてそれだけが理由だろうか?
上述の⽥原俊彦主演『エル・オー・ヴィ・愛・N・G』の同時上映作である少年隊の初主演作『あいつとララバイ』(監督:井上梅次、1983年)も、VHS化されたのみ。先日、錦織一清、植草克秀が年内いっぱいで事務所を離れることが発表された少年隊だが、現段階ではジャニーズ事務所の現役最古グループであることから、封印と肖像権問題とは必ずしも結びつかないことがわかる。同じく少年隊主演で、SFかつミュージカルという意欲作『19ナインティーン』(監督:⼭下賢章、1987 年)も封印状態。ただし、この作品に限っては、BOØWYや中村あゆみなど、劇中で複数のミュージシャンの楽曲が用いられていることがネックとなっているとの見方もできるが……。
【前篇】で触れたように、『ボーイズ&ガールズ』(監督:森田芳光、1982年)、『ヘッドフォン・ララバイ』(監督:山根成之、1983年)が解禁されたシブがき隊も、3作目の『バロー・ギャングBC』(監督:和泉聖治、1985年)は封印されたままだ。
ジャニーズ史上屈指の人気を誇った光GENJIの絶頂期に当たる1988年に、GENJI主演の『ふ・し・ぎ・なBABY』(監督:根本順善)、光主演の『…これから物語~少年たちのブルース~』(監督:榎戸耕史)が2本立てで上映された。この2作品もやはり例外ではなく、現在は事実上封印状態にある。
その他、ひかる一平主演の『胸さわぎの放課後』(監督:石山昭信、1982年)、中村繁之主演の『ザ・サムライ』(監督:鈴木則文、1986年)、男闘呼組の前田耕陽主演の『いとしのエリー』(監督:佐藤雅道、1987年)、同じく男闘呼組の高橋一也(現・高橋和也)が出演した『フライング 飛翔』(監督:曾根中生、1988年)も容易には観ることができない。『胸さわぎの放課後』には4人編成だった少年隊の前身「ジャニーズ少年隊」が顔を出しているなど、昭和ジャニーズマニアが再確認したい点も多々あるのだが、やはり鑑賞は難しい。
ジャニーズ在籍時の田原俊彦主演作『瀬戸内少年野球団・青春篇 最後の楽園』はDVD化
【前篇】で取り上げた作品は、いずれもテレビ放送、劇場での上映というかたちでの解禁であった。では、昭和期のジャニーズ事務所所属タレントの出演作は、これまで一切DVD化、Blu-ray化がなされていないのだろうか?
答えは「ノー」である。まず、ジャニーズ事務所が製作にタッチしていない作品では、いくつか例がある。たとえば、ひかる一平が出演した一連の「必殺」シリーズ作品がそうだ。田原俊彦主演の『瀬戸内少年野球団・青春篇 最後の楽園』(監督:三村晴彦、1987年)もDVD化されている。
また、2019年に初めてパッケージ化(DVD)された『わが青春のイレブン』(監督:降旗康男、1979年)も注目すべき作品だ。
主演は永島敏行(ジャニーズ事務所とは無関係)だが、主題歌をフォーリーブスの青山孝が歌い、「リトルリーブス」という4人組のメンバーだった森谷泰章 (1976年にソロデビュー)が主要キャラのひとりを演じ、さらに川崎麻世が歌手の役でゲスト出演。オマケに川崎のバックバンドのメンバーとして、歌手デビュー前の田原俊彦も登場する……という、極めてジャニーズ色の濃い作品なのだ。
青山はすでに故人であり、森谷、川崎、田原もジャニーズ事務所を離れて長いが、DVD化に当たりメーカー(Happinet)がジャニーズ側におうかがいを立てなかったとは考えにくい。見方を変えれば、ジャニーズ事務所はOKを出したということになる。
やはり、ジャニー喜多川氏没後の新体制ジャニーズ事務所は、さまざまな面で方針が変わったとみていいのではないだろうか。
今年9月4日には、“メリー喜多川”こと藤島メリー泰子氏が代表取締役会長から退いたことが報道された。今後は、2019年1月にタレント活動に終止符を打ち同社副社長となった滝沢秀明氏、そしてメリー氏の娘で同社社長となった藤島ジュリー景子氏が同社を牽引していくことになる。
そうした情勢の変化に伴い、たのきんトリオや少年隊、光GENJIの主演映画までもが解禁される日を待ち望んでやまない。