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赤石晋一郎「ペンは書くほどに磨かれる」

宮迫博之と元週刊誌記者の私、対談で考えた“不倫報道の意味”…心に響いた宮迫の言葉

文=赤石晋一郎/ジャーナリスト

「嫁から、私のここ(心の)のほうがよっぽど痛いねん! 僕はまぁまぁデカイ声で『ごもっともです!』と謝りました」

 こう不倫発覚の修羅場について告白をしたのは、「雨上がり決死隊」の宮迫博之氏だ。宮迫氏といえば冠番組をいくつも持つ売れっ子芸人でありながら、“オフホワイト不倫”などで幾度も週刊誌を賑わせてきたお騒がせ男。昨年6月に発覚した闇営業問題をきっかけにテレビから姿を消していた。

 7日公開のYouTubeチャンネル「宮迫ですッ」では、宮迫氏と元週刊誌記者の私(赤石晋一郎)という対談企画が行われた。きっかけは、宮迫氏サイドからのオファーであった。

 近年、週刊誌報道によって活動自粛に追い込まれる芸能人が多数出るようになった。「週刊誌が有名人の人生を狂わせている」という批判も渦巻くなかで、私は元週刊誌記者として批判に背を向けてはいけないと考えて対談を引き受けることにした。スキャンダルを報じられた芸能人と元週刊誌記者という異色対談では、闇営業やスキャンダルの裏表についてのトークを繰り広げることになった。

不倫にも被害者がいる

 2017年8月に「週刊文春」(文藝春秋)で報じられた宮迫氏とモデル・小山ひかるや美容ライターなどの複数不倫騒動、いわゆる“オフホワイト不倫”が話題となった。

 当時、宮迫氏はレギュラーを務めていた『バイキング』(フジテレビ系)でも謝罪、そのとき「来たくなかったけど、嫁に『行ってこい』と言われたので……」とコメントしていた。不倫発覚時の、宮迫氏の妻は怒髪天をつく怒りようだったとか。そのときの裏話について宮迫はこう激白する。

「(もう)不倫はしませんよ。そんなことしたらどうなるか。オフホワイトの時も大変やったんですよ。記者に直撃されて、そのまま上(自宅)に上がって、嫁に報告したときに木彫りの時計の重たいやつを投げられて。『お前、何回目やー』と怒られた。木彫りの時計が手に当たって骨折れたと思いました」

 不倫騒動で修羅場となったが、その後は“嫁迫”(YouTubeでの妻の呼称)との関係を修復したようだ。宮迫氏のYouTubeチャンネルでは嫁迫としてたびたび出演しており、現在では仲睦まじい姿を見ることができる。雨あがり、地固まるとなったのであろうか。

 週刊誌の不倫報道では、「不倫は当事者の問題であり公にすべきじゃない」との批判を受けることがある。だが不倫は犯罪ではないものの、少なからず被害者がいるという場合が多い。それは妻であったり、家族であったり、ときに不倫相手であったりする。

 ある取材では、夫と有名人女性の不倫によって、家庭が崩壊しすべてを失ったという妻の話を取材したことがある。おそらく週刊誌が報じなければ、この不倫問題は妻が人知れず苦しむだけで終わっていたはずである。ケースバイケースであるが、ときには事実を報じなければいけない時がある、と元週刊誌記者としては思うことは少なくない。

週刊誌の本質

 また対談では、宮迫氏の週刊誌への複雑な思いも吐露された。

 いわゆる「闇営業問題」報道により人生が大きく変わった宮迫氏だが、「僕が今の状態になるなんて、1年前には夢にも思っていなかった。もちろん褒められることで今この状態になったわけではないですけど、でも出会うはずがなかった今のこのYouTubeの世界だったり、ここに携わっているさまざまな人たちと出会えたから、いろんなものが見えてきた部分もある。記事を出されたきっかけでこういう状況になってて、変な話うっすら感謝もしてるんです」と対談では語った。

 宮迫氏は「今、第7世代と同じ気分ですから。『これからやったんねん!』『見とけよ!』って気持ちがあります。まさか50(歳)にして、若手と同じ気持ちになれるなんて夢にも思わなかったんです」と前を向いていたことは印象深かった。

 彼の言葉を聞きながら、私も自分の担当した記事をいくつも思い浮かべた。感謝される記事というのもあるが、私が担当したスキャンダル記事によってダメージを受けた人が少なからずいることも認識しないといけない。

 宮迫氏の発言や、彼の思いは、報道する立場の人間も重く受け取るべきだと私は思った。芸能人は、犯したスキャンダル以上の社会的制裁をときに受ける。記者としては事実を目の前にしたら、報じないという選択肢はない。しかし、報道後に起こる芸能人に対する世論のバッシングや批判に対して、“我関せず”という立場でいていいはずはない。

 私は対談で「これは僕らが言うべきことではないと思いますけど、本物の人は生き残っていきますし、僕らも書いた以上は再起される方に対しての手助けみたいなことを、できるかどうかは別として考えることも必要なのかなと思います」とコメントした。批判ばかりの記事では、週刊誌の辛口だけど自由で面白いメディアという本来の良さが消えてしまうのではないかと思ったからだ。

 日本の週刊誌はジャーナリズムとゴシップが一緒に読める面白いメディアとして進化してきた。不倫記事ばかりだとネットでは叩かれるが、たまたま不倫がワイドショーやネットで“バズる”というだけであり、週刊誌を精読して批判する人という人は実は少ない。政治、経済、事件などさまざまな記事が週刊誌には掲載されており、ある意味、正義もあればゴシップもあるという包容力のあるメディアとして週刊誌は存在している。

 人間の裏表を描くメディアとして長く読者に親しまれてきたが、ネット時代になり不倫記事ばかりが話題となり「人斬りメディア」としての印象のほうが強くなっているように思う。だが、有名人の批判もすれば、有名人の独白インタビューも掲載されるのが週刊誌本来の姿ではないだろうか。宮迫氏も「プラスになる情報をね。それを面白く見せられる雑誌であってほしいですよね。それは文春さんの新しい道じゃないですか」と語ったことは、元週刊誌記者としても心に響いた。

 記者は真実に重きを置くし、真実を報じようと考えるということは今後も変わらないだろう。だが真実はときに人を傷つけるし、報道が拡散されていく過程で不必要なバッシングに発展していくケースも多い。

 そのときに何をすべきなのか。その後に何を書くべきなのか。ある作家からは「文士たるもの斬り方にも美学を持て」と助言をもらったことがある。それは報道する側は冷酷非情であってはならない、斬られる相手への“情”も必要であるという意味だと私は考えている。

 スキャンダルが耳目を集める時代になったからこそ、週刊誌記者も自らの仕事を省みる必要があるといえるのかもしれない――。

(文=赤石晋一郎/ジャーナリスト)

・宮迫氏との対談はこちらから↓

赤石晋一郎/ジャーナリスト

赤石晋一郎/ジャーナリスト

 南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。講談社「FRIDAY」、文藝春秋「週刊文春」記者を経て、ジャーナリストとして独立。
 日韓関係、人物ルポ、政治・事件など幅広い分野の記事執筆を行う。著書に「韓国人韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」(小学館新書)、「完落ち 警視庁捜査一課『取調室』秘録」(文藝春秋)など。スクープの裏側を明かす「元文春記者チャンネル」YouTubeにて配信中

Note:赤石晋一郎

Twitter:@red0101a

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