今や漫画やアニメの実写映画化は珍しくもなんでもない事象ではあるが、SNSなどの発達に伴ってか、常に原作ファンからの厳しい目にさらされ、その分作る側も慎重に取り組まなければならなくなっているのもたしか。
それこそ私が子どもの頃に作られた『あしたのジョー』(70年)だの『ゴルゴ13』(73&77年)だの、『男組』(75、76年)『野球狂の詩』(77年)『ドカベン』(77年)『サーキットの狼』(77年)『ドーベルマン刑事』(77)『瞳の中の訪問者』(77年・原作『ブラック・ジャック』)『火の鳥』(78)などなどなどなど(!?)、原作をリスペクトしながら作られた実写映画が当時どれだけあったかを考えると(せんだみつお主演の77年作『こちら葛飾区亀有公園前派出所』なんて、今なお封印作品になっている始末だ……。まあ、実はみんな憎めない映画ばかりでもありますけどね)、今のファンはある意味めぐまれていると思う。
実際、結果としての出来不出来はともかくとして、原作と真摯に向き合う今の作り手側の姿勢は多くの作品で十分確立されているように思える。この7月だけでも『銀魂』や『心が叫びたがってるんだ。』といったマンガやアニメを原作とした実写化作品がお目見えしているが、それなりの評価を得ているようだし、私個人もかなり面白く見させてもらった(余談だが『銀魂』試写会の後、その内容に呆れ返って激怒していた老人、いやベテラン映画評論家の姿をお見かけしたが、逆にそれって作り手側の思うツボだなあと痛感することしきり)。
7月29日に公開となった『東京喰種 トーキョーグール』の場合、ダーク・ファンタジーというジャンルゆえに、演出やキャスティングのセンスなどは必要最低限としても、今の日本の映像技術でその世界観をきちんと確立できるかということも大きな焦点となるだろうが、これが映画デビュー作となった萩原健太郎監督の目線は確実に原作をリスペクトしていることが容易に読み取れ、また人肉を喰らう異形の種族“喰種(グール)”を主題とすることでの数々の残酷描写を臆することなく、それでいてスタイリッシュな映像美で魅せることで、原作の非情な世界観を損なうことなくPG12のレイティングを実現させていることは大いに称賛すべきかと思う。
キャスティングも、今回はグールの血を輸血されて半人半喰種と化した主人公の青年カネキ役の窪田正孝は、原作者・石田スイ自身のお墨付きもあって、まさにどんぴしゃり。気弱で優しく、しかし時折グールとしての残忍さをのぞかせてしまう二面性の発露もお見事で、その熱演ぶりにも嫌みがない。