小泉今日子主演の連続テレビドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)の最終回が19日に放送され、平均視聴率は前回より1.1ポイントダウンの7.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
沖縄に飛んだ信彦(塚本高史)は、ユキ(雛形あきこ)の殺害を指示したのが吾郎(伊勢谷友介)であることを示す証拠の動画を発見した。これをスマートフォンで受け取ったカヨ(小泉)たちは、この動画を警察に提出するとともに自分たちは出頭することを決める。これが決め手となり、吾郎は逮捕・起訴されることに。留置場にいたカヨたちは不起訴処分となり、罪を認めた吾郎は無期懲役を求刑される。無罪が確定したしのぶ(夏帆)は釈放され、EDOミルク改め江戸川乳業の社長に就任した――という展開だった。
放送後、SNSには絶賛の声が相次いだが、率直に言ってどこをひいき目に見たらそんなに手放しで称賛できるのか不思議でならない。特に気になったのは、社長の座に就くために人殺しまで計画するほどの悪党だった吾郎が、不用心にも殺人の証拠となる映像を残していたことだ。ヘルメットに取り付けたカメラを作動させたまま殺し屋に犯行を指示し、その映像が残ったままカメラをボートハウスに返却するというミスは、あまりにもあり得ない。事件を捜査した警察も、しのぶが頭に付けていたカメラの映像は確認したのに、吾郎が使っていたカメラの映像は確認しなかったらしい。話を収束させるためとはいえ、随分と都合の良い設定である。
ユキ殺害事件の真相解明を、吾郎の自白に丸ごとぶん投げてしまったのも残念だ。これまで緻密に伏線を積み上げつつ物語を紡いできたのに、最終回でごく当たり前のよくあるドラマになり下がってしまった。吾郎が殺人を教唆しただけでなく、実行犯でもあったというオチは確かに衝撃的ではあったが、「予想していたよりも悪い人だった」という程度の驚きであり、意外性もひねりもない。吾郎にも同情すべき過去があったことが明かされはしたが、彼ひとりを絶対的な悪として描くような単純すぎる作劇にはがっかりさせられた。
クドカンファンは「伏線が見事に回収された」と喝采を送るが、果たしてそうだろうか。
勇介のキャラクターは初回と最終回で明らかに変わっているし、そもそも吾郎の子どもではないかもしれないという疑惑は単なるミスリードだった。カヨたちのニックネームと本名がネットに出回り、裏切者の存在がほのめかされたのもミスリードでしかなく、どこから情報が流れたかは謎のまま。殺される直前のユキの台詞を千夏が再現できた理由にも合理的な説明はなく、受刑者たちの回想シーンに吾郎が登場したのと同じ演出だと思うしかない。また、信彦がなぜあんなにカヨにご執心だったのかも明かされないままで、これまた都合よく検事を話に絡めるためだけの設定でしかなかった。最終回は適当にいい話にまとめたが、中盤から終盤にかけての盛り上げ方に比べると大失速と言わざるを得ない。
とはいえ、第9話までは「どこに着地するんだろう」と楽しませてくれたし、全力でおばさんを体現した小泉や緩急自在の演技を見せつけた満島、憎たらしいほどに悪人ぶりがはまった伊勢谷など、俳優陣も素晴らしかった。世間の記憶にはあまり残らないドラマだと思うが、俳優たちの魅力を引き出してくれた作品として記憶にとどめたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)