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『きみが心に棲みついた』「胸クソ悪」く視聴者大量離脱か…あえて反感買う超高度な戦略?

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 吉岡里帆が初の主演を務める連続テレビドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)の第2話が23日22時から放送される。吉岡は、向井理演じる星名と桐谷健太演じる吉崎という2人の男性の間で揺れ動く女性、今日子を演じている。

 番組公式サイトでは「《キュン》のドキドキと《ゾクッ》のドキドキが共存する新感覚ラブストーリー」と紹介されており、予告動画などでも三角関係のラブストーリーであることが強調されていたため、軽い気持ちで第1話を視聴した人も少なくなかったと思われるが、放送後は「胸クソ悪い」「ただただ不快なドラマ」などネットが大荒れになった。

 批判のほとんどは、星名が暴力と甘い言葉で今日子を洗脳して支配下に置こうとするDV男だったことに向けられた。また、主人公の今日子に対しても、オドオドした性格かと思えばやたらと積極的に行動するなど、行動が一貫しないことについて「設定がよくわからない」「イライラする」などの声が上がった。現状では肯定的な声よりも批判のほうが目立つ。

『あなそれ』の再現ねらう?

 第1話では、今日子がかつて星名に髪の毛を切られたり、男子学生の前で裸にさせられたりした過去があることが描かれた。その後しばらくは接点がなかったようだが、星名はある日突然、勤め先の上司として今日子の前に現れる。視聴者としては「今日子、早く逃げて」と言いたくなるのだが、当の今日子は「一番会いたくて、一番会いたくなかった」と心の中でつぶやく。かかわってはいけない人物とのかかわりを断ち切れないのだから、視聴者がイライラしてしまうのも無理はない。DV男と、そこから逃れようとしない女という組み合わせを見せられて楽しいはずもなく、たった1話で脱落する視聴者が相次いだとしても無理はないだろう。

 ただ、TBSとしても、そんなことはわかっているはずだ。それなのに、あえて一般受けしない原作を映像化した背景には、2017年4月期に同じ火曜ドラマ枠で放送した『あなたのことはそれほど』の成功体験があるに違いない。『あなそれ』の愛称で呼ばれた同作は、波瑠演じる主人公が罪悪感を持たずに不倫に走るという異例の展開で炎上騒ぎとなり、序盤は視聴率を下げた。ところが、どこまでもケロリとした態度を貫く瑠演の演技と夫役の東出昌大の怪演が次第に評判を呼び、中盤からは視聴率も回復。最終回では平均視聴率14.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、有終の美を飾った。

 このことが、TBS社内に「当初は『胸クソドラマ』などと批判される題材であっても、視聴率を取れる」「むしろ、批判される題材のほうが視聴率を取れる」といった空気をもたらしたとしても不思議ではない。つまり、本作は『あなそれ』的胸クソストーリーに、これまた火曜ドラマ『カルテット』(17年1月期)のエキセントリックな演技で評判を集めた吉岡を主役にはめ込んで高視聴率を狙おう、という方程式でつくられたドラマなのではないだろうか。

 とはいえ、そのもくろみがうまくいくかどうかは未知数だ。向井の冷酷な演技は怖いくらいにハマっていると思うし、吉岡もそこそこ役柄を忠実に演じているとは思うが、『あなそれ』の波瑠と東出のような突き抜けた魅力は今のところ感じられない。そもそも、なぜ星名が今日子に執着するのかがよくわからないし、なぜ普通に人間関係に恵まれているはずの今日子が、いまだに星名に惹かれるのかも理解できない。

 また、おそらく共依存の関係にあるこの2人を中心に据えた時点で、吉崎は今日子を気にかけて良くしてくれるが、結局彼女は星名のもとに舞い戻る……という展開が繰り返されるだろうことが予想される。もし、その通りの展開になってしまうと視聴者はイライラさせられるばかりとなってしまい、視聴率の伸びも期待できないだろう。ただ、裏を返せば今日子と星名の関係性について説得力ある背景を描いたうえで、今日子が一歩ずつ星名の洗脳下から脱出していくさまを描くことができれば、良作として評価される可能性も大いにありそうだ。第2話では早くも、今日子が星名の支配下から脱却しようと奮闘するようだ。

「胸クソドラマ」のまま終わるのか、スカッとする展開に転じるのか、しばらくは成り行きを見守りたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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