土屋太鳳主演の連続テレビドラマ『チアダン』(TBS系)の第8話が31日に放送される。広瀬すずが主演を務めた同名映画で描かれたチアダンス部「JETS」の打倒を目指す、福井西高校のチアダンス部「ROCKETS」を描く青春ドラマだ。視聴率は第2話の8.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)が最高で、第5話では5.5%にまで落ち込んでしまったものの、第6話で6.1%、第7話で7.1%と再び数字を戻しつつある。
基本的には毎回、何か困難が起きては最後に解決するというパターンで、終盤には必ずダンスシーンが織り込まれる構成になっている。第8話の放送を前に、24日に放送された第7話を振り返っておこう。
ROCKETSは、3年生になった藤谷わかば(土屋)を中心に、地区大会に照準を合わせて日々練習に励んでいた。だが、榎木妙子(大友花恋)の父が腰を痛めてしまい、彼女は父の店を手伝わなければならなくなる。もともとダンスが得意でないうえに練習不足が重なり、妙子は明らかに他の部員たちの足を引っ張るようになってしまう。部員たちの間にも不満が募り、空気を察した妙子は「次の大会には出ない」と部員たちに宣言する。
桐生汐里(石井杏奈)らは、「優勝するためには仕方がない」とそれを受け入れるが、わかばだけは納得できずにいた。そして、妙子の練習時間を確保するための秘策を考え出す――という展開だった。「ダンスが下手」で「中華料理店の娘」であるという妙子のキャラクター設定がほぼ初めて生かされた回となったわけである。
結局、わかばの考え出した秘策とは、部員たちが交代で店を手伝うことで妙子の練習時間を増やすというものだった。まあ、ありきたりといえばありきたりだし、よその家の娘をタダ働きさせても大丈夫なのかという疑問も湧くが、ファンタジー路線のドラマなので細かいことを言っても仕方がない。こうして一丸となって練習に取り組んだROCKETSは、見事「北信越チャレンジカップ」で優勝を果たしたのだった。ここまでが第7話のあらすじだ。サイドストーリーとして、委員長こと桜沢麻子(佐久間由衣)らの恋愛話も描かれたが、本筋に深く関わってくる要素ではなさそうだ。
個人的な感想を言ってしまうと、この第7話はこれまでのなかで唯一、感動できなかった回だった。理由は簡単で、「困難を乗り越えた感」が薄かったからにほかならない。妙子の練習時間が足りない問題は、店の手伝いをシフト制にすることであっさり解決してしまい、後は普通に練習して大会に臨み、すんなり優勝してしまったという平坦なストーリーで、感動するツボに乏しかった。もっと練習が厳しく、時には涙を流しながら練習するくらいの描写があれば優勝した瞬間に感動できたのかもしれないが、実際には苦労があまり伝わってこなかったため、胸に迫るものもあまりなかったといえる。
圧倒的な強さを誇るJETSが出場しなかったからとはいえ、2週間に一度指導者が来てくれるだけのROCKETSが簡単に優勝してしまうという展開も、あまりしっくりこなかった。話をテンポよく進めるためには仕方ないとも思うが、この段階で優勝するのは違う気がする。あと一歩及ばず、「今度こそは」とさらに練習に打ち込むくらいの結末でも良かったのではないだろうか。
とはいえ、ROCKETSの20人でのチアダンスは見ごたえがあったし、青春を感じさせる映像として美しかった。ダンスの出来には賛否両論あるようだが、少なくともROCKETSのメンバーを演じる女優たちはダンサーではないし、むしろダンス経験がない人のほうが多いという。女優たちが一生懸命練習の成果を披露しているという目で見るのが正しい。
そう思って見ると、「よくやっているな」「みんながんばっているな」と温かい気持ちになってくるし、彼女たちを応援したい気持ちにもなってくる。劇中で描かれる練習シーンにはほぼ何の見せ場もないが、もしかしたらこのドラマは、本編よりもメイキング映像を編集した女優たちのドキュメンタリー映像を見たほうが何倍も感動できるのかもしれない。少なくとも筆者は、そんなものを見せられたらすぐに泣くだろうな、という妙な自信がある。
さて、第8話は、わかばらが卒業後の進路を考える時期となり、それにともなってさまざまな問題が起きていくという展開になるようだ。さらに、チアダンス部設立の言い出しっぺである汐里の脱退騒動まで描かれるらしい。またしてもダンス以外の要素に尺を取られてしまい、「練習に練習を重ねて地道に強くなっていく」というストレートな展開が追いやられてしまいそうな予感もするが、最終回を見据えてこのあたりで「雨降って地固まる」的なエピソードがもうひとつ必要なのかもしれない。あれほど「JETSに勝ちたい」と言い張っていた汐里が、なぜ今になって脱退しようとするのか。これをまさかの感動展開で描くことができれば、視聴者の心をさらにググっとつかむことができそうだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)