新垣結衣と松田龍平がダブル主演を務める連続テレビドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)の第2話が17日に放送された。平均視聴率は第1話から3ポイント減らして8.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となり、2話目にして早くも1桁台に転落した。
視聴率大暴落の原因は、かなりはっきりしている。『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)以来となる脚本・野木亜紀子×主演・新垣結衣の組み合わせで関心を集めていたのに、第1話があまりにも期待外れだったからだ。つまらないだけならまだしも、新垣演じる会社員・深海晶がパワハラとセクハラを受ける場面をほぼ丸々1時間見せられるという苦痛を強いられた。これを受けて、第1話放送後は「第2話からは見ない」といった書き込みがインターネット上にかなりあふれた。
さすがに脚本の野木亜紀子も空気を察したのか、第2話の放送前日に自身のTwitterアカウントで「前回つらかった皆様、毎週同じことはしないので、今日は大丈夫です。安心してお楽しみください」とツイートした。これについての賛否はひとまず置いておく。
第2話は、なんでもかんでも仕事を押し付けられてきた晶が社長の九十九剣児(山内圭哉)に業務改善要求を突き付けた場面から始まった。九十九がその内容を声に出して読み上げるたびに、晶が控えめに「いたしません」と宣言したのはおもしろい。言うまでもなく『ドクターX』(テレビ朝日系)の大門未知子(米倉涼子)のパロディーだ。先週はおもしろいところがひとつもなかったが、今週は何やらコメディーチックでおもしろそうだぞ、と期待させる幕開けである。
その期待にたがわず、第2話は最後まで「おもしろそうな雰囲気」を漂わせて終わった。だが、具体的にどこが良かったのかと聞かれると、「うーん……」と考え込んでしまう。あくまでも、「なんとなく、おもしろそうな雰囲気だった」としか表現できないのだ。だからといって悪いわけではない。思い返せば、『逃げ恥』だって序盤は「ガッキーがかわいい」「ダンスが楽しい」など、雰囲気でもっていたようなところがある。「内容もおもしろい」と多くの人が言い始めたのは中盤からだった。今作も、今後いくらでも巻き返しは可能だ。
これからおもしろくなりそうな「種」はいろいろまかれた。晶と婚約者の花井京谷(田中圭)のなれそめが回想で描かれ、それに伴って晶が昔から周囲に気を遣い、いつも「いい人」になってしまう性格であることも明らかになった。京谷の元恋人・長門朱里(黒木華)がいまだに彼の家に居座っている理由も明かされたし、晶はそんな現状に不満を感じているのか、「他の人好きになりたい」と京谷の前でつぶやいた。一方、朱里が居座っていることなど知る由もない京谷の母親(田中美佐子)は、「早く一緒に住めばいいのに」と晶をせかす。
そして、今後晶との関係を深めていくであろう根本恒星(松田龍平)は、何者かに大金をもらって、なんらかの不正に関与している疑いがある。現時点ではいろんな要素を盛り込みすぎて話が散らかっている感じはあるが、第3話以降の展開次第では十分うまくまとめられるはずだ。おもしろくなるのか、このまま「雰囲気ドラマ」で終わるのか、もう少し様子を見たい。
ただ、少々気になる部分はある。本作は、『獣になれない私たち』というタイトルが表すように、本能のままに生きられない「頭でっかちな大人」を描く作品だと自称している。だが、晶は意外と昔も今もわがままなのだ。京谷の会社に派遣社員として勤めていた時は、互いに恋人がいたにもかかわらず頻繁に2人で食事をしたりお酒を飲んだりし、挙句の果てには人が通る店の前で濃厚なキスまでしていた。「獣になれない」とはどの口が言うのか。
また、恋に落ちる時に頭の中で聞こえるという鐘の音を聞きにどこかの教会に出かけるのはいいが、それに恒星を付き合わせるのも意味がわからない。これまでの接点の中でどこに仲良くなる要素があったのだろうか。大して親しくもない、単なるビアバーの常連というだけの共通点で男を連れ回すとは、なかなかのやり手ではないか。どうもドラマのテーマとキャラ設定が合っていないような気がする。
さて、第2話は、晶が名目上昇進させられただけで、業務内容の改善はまったく実現されないという胸クソの悪い結末で幕を下ろした。せっかくおもしろくなりそうな伏線を張り巡らしたのに、ぶち壊しである。野木氏の言う「今日は大丈夫です」とは、なんだったのか。2週連続の“胸クソ展開”に、視聴者からは「第2話まで我慢したけどもう脱落する」との声も上がっている。ここから挽回なるか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)