有村架純が主演する連続テレビドラマ『中学聖日記』(TBS系)の第8話が27日に放送され、平均視聴率は前回から1.2ポイント増の7.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。これは、同ドラマとしては過去最高である。最終回が間近に迫った第8話になって、急激に盛り上がりを見せている。
このドラマは、婚約者がいながらも、自分が担任する中学校の男子生徒・黒岩晶(岡田健史)に心惹かれていく教員・末永聖(有村)の禁断の恋を描く物語として始まった。だが、2人の不適切な関係はやがて学校にバレてしまい、聖は学校を去ることに。晶ともそのまま別れ、3年の月日が流れた。現在は小さな町で小学校の教員として再起を図っていたが、運命が再び2人を引き寄せていく。
第8話は、出勤する聖の前に晶の母・愛子(夏川結衣)が突然現れた場面から始まった。鬼の形相、とまではいかないが、どう見てもふつふつと怒りをたぎらせている表情だ。愛子は「若い女教師がかわいい息子をたぶらかした」と逆恨みに近い感情を抱き続けているのだ。どんな修羅場が始まるのかと視聴者の期待も高まったが、ちょっとイヤミを言っただけでおとなしく退散してしまった。なんだそれは。
ところが、聖に敵対心を向ける橘美和(村川絵梨)がこの光景を陰から見ていた。美和はネグレクトしていた娘を実家に取り上げられ、なぜか学校や聖を恨んでいたのだ。「いいネタを見付けた」と思ったのか、美和は帰ろうとする愛子に近付き、聖の過去を聞き出す。そして、「聖は前にいた中学校で生徒と淫行して妊娠して辞めた」というガセネタをウキウキで母親たちに広めてしまう。
妙に美人なのにめちゃくちゃ性格が悪く、人を陥れて勝ち誇ったような顔をする村川絵梨の演技は悪役としてかなりおもしろい。まだ登場して3話目だが、期待通りの大暴れである。と思ったら、ちょっと聖に親切にされたくらいでコロッと改心してしまった。なんなんだこの展開は。
せっかく粘着質でヤバそうな敵を2人も登場させ、聖がじりじりと追い詰められていく展開になるのかと期待したのに、2人ともちっとも聖を追い詰めないのだ。つまらないにもほどがある。クソみたいな展開だなと思っていたら、今度は聖がいきなり「(中学校で生徒と問題を起こしたという)噂は本当です」と母親たちの前で告白し始めた。これには視聴者も呆れてしまい「なんで余計なこと言うのか」「あーあ、せっかく周囲が取り繕ってくれてたのに」「救いようのないアホだな」といった声が上がった。
当然のことながら学校には抗議の電話が殺到し、聖は副担任から外されてしまう。聖がいきなり過去を告白したのは、晶から「過去を切り捨ててなかったことにしても、新しい自分にはなれない」という謎の理論を吹き込まれたからだ。やり直すためには、過去をさらけ出す必要があるのだと解釈したらしい。
そんなことを言ったら、聖は今後どこに行っても「私はかつて中学校の教員をしていた時に生徒と不適切な関係になったことがありますが、そんな私で良ければよろしくお願いします」と言って回らなければならないことになる。そんなアホみたいな話があってたまるか。今までも到底頭が良さそうには見えなかったが、聖ったら本格的に頭が弱すぎる。
この後、聖は、晶が掛けてきた思わせぶりな電話に誘われるままに彼を追いかけ、フェリー乗り場へ直行。船上に晶の姿を見付けてそのもとに駆け寄ると、船はそのまま岸壁を離れた。またしても「乗船券買ってないだろ」「無賃乗船かよ」「きっぷ買わないのにどうやって船に入れたんだろう」と視聴者からのツッコミが殺到した。
まあ、ドラマだから乗船券を買ってないのには目をつぶるとしても、晶をひたすら追いかけた聖の行動はあまりよろしくない。なぜならこのとき聖は、晶が置き手紙をして行方不明になり、母親らが必死になって探していることを知っていたからだ。もし自分にだけ電話があったのなら、心配している母親に連絡するのが先だろう。そうせずにただ晶のもとへ駆け付ける時点で、教師どころか社会人失格と言わざるを得ない。
生徒を好きになった過去は、「一時の気の迷い」「若気の至り」でまだ許される。だが、家出した高校生の居場所を親に知らせず、一緒に逃避行するというのは、後でどんなに言い訳をしようと誰も擁護できないのではないだろうか。制作側はここから最終回にかけて盛り上げていきたいはずだが、主人公である聖がこんなにクソ化してしまっては、せっかくおもしろ半分に楽しんでいた視聴者も離れてしまうのではないか。あれだけ晶を拒否していた聖が最終的に彼を追いかけた理由もさっぱりわからないし、もはや終着点が見えなくなってきた。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)