有村架純が主演する連続テレビドラマ『中学聖日記』(TBS系)の第10話が11日に放送され、平均視聴率は前回から0.5ポイント減の7.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
このドラマは、小学校の教員・末永聖(有村)と、元教え子の黒岩晶(岡田健史)との禁断の恋を描く物語。2人は中学校の教員と生徒として3年前に出会い、恋の炎を燃やしたものの、社会的に不適切とされる関係が長続きすることはなかった。それから3年後、運命に引き寄せられるように2人は再会。第9話のラストで、ついに2人は結ばれた――かに見えたが、抱き合っただけで結局、何事もなかったことが明かされたところから第10話は始まった。
最終回前ということもあってか、第10話はツッコミどころ満載の「おバカ展開」でぐいぐい突き進んだ。挙げればキリがないが、聖の元婚約者・川合勝太郎(町田啓太)と別れたばかりの原口律(吉田羊)が、唐突に同性愛者の“元カノ”とよりを戻したという、どうでもいい設定回収が行われたのもそのひとつ。
一方、律にフラれた勝太郎は聖を訪ね、いきなり「赴任先のシンガポールに来ないか」と言い出す。あっちにフラれたから元カノとよりを戻そうとか、随分虫のいい話である。案の定、あっさり断られた勝太郎は、何を思ったか晶に「キミのせいで聖は教師を辞めることになった」とわけのわからない口出しをする。勝太郎の申し出をきっぱり却下した聖は、今度は律に近付き、部屋を借りる際の保証人になってほしいと頼み込む。元カレがつい最近まで付き合っていた女にそんなことを頼むとか、どうかしているんじゃないだろうか。
ところが、律はめちゃくちゃ乗り気で、聖を「罵詈雑言浴びながら何かを得ようとする勇者」と持ち上げ、「私は勇者の味方」と、依頼を快諾する。ものすごく狭い人間関係だけで物事が完結する世界である。どいつもこいつも感覚がちょっとおかしいし、言うことやることが気持ち悪い。
この回は、主人公である聖の人間性が悪い意味で浮き彫りになった回でもあった。多くの視聴者が「この態度はありえない」と声を上げたのは、聖が母親の里美(中嶋朋子)とともに、晶の母・愛子(夏川結衣)に謝罪に出向いた場面だ。なんとか穏便に収めてもらおうとして里見が必死に謝っているのに、聖といったらバカ正直に「(もう晶君と会わないという約束は)できません」「お許しをいただけるように(努力します)」などと、頑として今後も交際を続けると言い張り、火に油を注ぐような態度を取ったのだ。
愛子はあくまでも冷静に、晶が未成年であることを念頭に「これ以上はしかるべき措置を取ります」と法的な手段を示唆した。あわてて立ち上がり、土下座して必死に許しを請う里美。だが、聖はそんなやり取りを繰り広げる母親たちを、ソファーに座ったままどこか他人事のような顔でボーっと眺めているだけだった。あまりにも態度が悪い。恋愛は自由かもしれないが、双方の母親がこれほど心を痛めている以上、「いや、本人同士の問題だから」では済まないだろう。
このあと聖は、先輩教師の丹羽千鶴(友近)からもガチギレされた。千鶴は、3年前に事件を起こした聖を見捨てず、教師に復帰できるように尽力してきただけに、裏切られたとの思いが強く、「もう教師やる資格ない」「結局ほんの一時かもしれない恋愛感情のほうが大事だったんだよね」「それがすべての言い訳になるんだもんね」と聖を責め立て、「おめでとう。お幸せに」と皮肉を込めて別れの言葉をかけた。
ようやく聖をガツンと叱ってくれる人がいて、久しぶりにスッキリした。と思ったのもつかの間、学校を去った聖はウッキウキで公衆電話から晶のスマホに電話を掛け始めた。ダメだこいつ、なんにも反省してない……。こんなわけのわからない役を演じている有村が少し気の毒になってきた。「この女、なんなんだろ」と、有村自身も大いに疑問に思っているのではないだろうか。
さて、肝心の聖と晶の関係はといえば、勝太郎の口出しが原因でいったんは晶が「もうこういうのやめよう」と別れを切り出したものの、お節介おばさんの律がしゃしゃり出てきて、最後にもう一度聖と晶を会わせようと画策。結局あっという間に元のサヤに収まり、「隣にいたい」「僕もです。先生の隣にいたいです」と再び愛を確かめあう2人。その時、2人の男が「末永聖さんですか」と声を掛けてきた。背中には「POLICE」の文字。警官は2人に、未成年者の連れ去りがあったとの通報で来たと説明し、署への同行を求めた。
主人公と相手の男性がそろって警察に連れて行かれるという衝撃の展開に、インターネット上も「警察キター」「聖ちゃんまさかの逮捕」「もしもしポリスメン?」「だから黒岩母が警告したのに」と大盛り上がり。実際には逮捕ではなく任意同行だと思われるし、立件される可能性もかなり低いが、28歳にもなって分別のない行動を取る聖には、正直言って「ざまあみろ」という感情しか湧いてこない。
制作側は純愛ドラマのつもりでつくっているのだろうから、もっとキュンキュンしながら2人の恋を応援しなければならないのだろうとは思うのだが、周囲にさんざん迷惑をかけ、自分勝手な論理で突き進む聖を毎週見せられているだけに、なかなか応援しようという気にはなれないのだ。
ここまで予想外の展開が続くと、最終回がどう決着するのかはまったく予想がつかない。登場人物がほぼ全員ちょっと頭がおかしいことを踏まえると、誰かが最終回で急にまともになるとも考えにくい。とはいえ、それでは誰も譲らず、決着がつかないだろう。果たして、どんな結末が用意されているのか。“おバカドラマ”として楽しみにしている。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)