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『SUITS』最終回、鈴木保奈美も市川海老蔵もまったく生かせず…ネット上で嘲笑の的

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 織田裕二が主演を務める連続テレビドラマ『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)の最終回が17日に放送され、平均視聴率は前回から0.4ポイント増の10.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 この作品は、勝つためには手段を選ばない敏腕弁護士・甲斐正午(織田)と、驚異的な記憶力を持つが弁護士資格を持たない鈴木大貴/大輔(中島裕翔)がバディを組み、数々の案件を解決していく弁護士ドラマ。最終回は、殺人事件の再審請求に挑む2人の奮闘を描いた。

 かつて検事として働いていた甲斐は、傷害の前科があった栗林という男を殺人事件の容疑者として起訴した。栗林は有罪となり、13年後の今もまだ服役中だ。だが、実は栗林は犯人ではなかった。栗林が無実であることを示す複数の証拠が検察の上層部によって意図的に隠されていたのだ。これを知った甲斐は、自分もだまされていたとはいえ栗林の人生を冤罪で狂わせてしまったことを後悔し、鈴木の助けを借りながら栗林の無実を証明する戦いに挑んだ――という展開だった。

 結果的に2人はハードルが高いとされる再審請求を勝ち取り、栗林は13年ぶりに出所した。大団円の結末を迎えたわけだが、視聴者からは「最終回が一番つまらなかった」「雑な最終回だな」「モヤモヤ感が半端ない」といった不評の声も少なくない。これはおそらく、甲斐や鈴木が法廷で戦う“見せ場”がなく、検察官相手に再審請求の交渉を重ね、再審を勝ち取るまでの地味な過程を描くのに終始したからだと思われる。交渉相手となったのが、上白石萌音演じる新人検察官だったというのも良くなかった。

 別に上白石に文句はないが、甲斐と鈴木が最後に対決する相手としては不足だった。ドラマの定番を踏襲するなら、最終回では悪の黒幕的な存在と戦うべきだった。ところが、このドラマはやる気があるのかないのかわからない新人検察官を最終回で戦う相手に設定してしまった。おかげで、せっかく2人が再審を勝ち取ったのに、まったく盛り上がりに欠けた。強い敵を倒してこそカタルシスがあるのであって、よくわからないザコキャラを倒したところで、視聴者がおもしろいと感じるはずがない。せっかく検察時代の上司・柳慎次(國村隼)や最高検の澤田仁志(市川海老蔵)といった大物を登場させたのに、強敵や難敵としてストーリーの中で生かしきれなかったのは残念だ。

 このほか、鈴木の悪友・谷元遊星(磯村勇斗)がいきなり改心し、鈴木もあっさり許して仲直りした雑な展開にも「展開が急すぎてついていけない」「こいつらの心情おかしくない?」といった批判が集まった。

 全11話を振り返っても、気になる点はいくつか浮かんでくる。まず挙げたいのは、甲斐のライバル役である蟹江貢(小手伸也)の存在。小手は今年4月期の『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)でブレイクした俳優であり、とにかくウザい蟹江を真剣に演じ切ってくれたが、正直言ってやりにくかったのではないかと思う。蟹江をどういう立ち位置のどんなキャラにしたいのかが回によってまちまちで、結果的にキャラ設定がブレブレになっていたからだ。「なんでもあり」のキャラクターとして、脚本家が便利に使いすぎたのではないか。

 中村アン演じる秘書・玉井伽耶子は、率直に言って不要なキャラだった。全11話を通して、玉井がいなければ成立しなかったエピソードはほとんどない。せっかくキャスティングしたのだから、もうちょっと生かしてやれば良かった。

 1991年放送の『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)以来の織田との共演で関心を集めた鈴木保奈美については、「ミスキャスト」との声も多い。大きな弁護士事務所の所長という設定の割りにキレ者感に乏しく、むしろ“いい女ぶっているおばちゃん”にしか見えなかった。NHK BSプレミアムで同時期に放送された『主婦カツ!』では、20年ぶりに働き始めた専業主婦を生き生きと演じていたので、今回は役柄があまり合わなかったのかもしれない。

 このほか、設定がおかしなところや脚本に無理がある点が目立つドラマだったが、その理由を突き詰めると「原作ありきのドラマだったから」に尽きる。「少々傲慢なやり手弁護士と、正義感にあふれた若手弁護士のバディが事件を解決する」くらいの設定にしておけば、かなり自由もきいたと思うのだが、ヘタに原作モノにしてしまったせいでさまざまな足かせにとらわれてしまい、ドラマとして微妙な出来になってしまった。もし続編をつくるとしたら、織田と中島のバディとしての活躍にもっと焦点を当ててほしい。欲張りすぎは良くない。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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