杉咲花が主演を務める連続テレビドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の第1話が17日に放送され、平均視聴率は12.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
このドラマは、あらゆるものが見える能力を持つ派遣社員・的場中(まとば あたる/杉咲花)が、その能力を駆使して周りの正社員たちが抱える悩みを解決していくお仕事コメディードラマ。『家政婦のミタ』『過保護のカホコ』(ともに日本テレビ系)などを手掛けた人気脚本家・遊川和彦が脚本と演出を担当する。
遊川のドラマは、前述の2作品のように大人気作品となることも多いが、その一方で救いのない展開に批判が殺到した連続テレビ小説『純と愛』(NHK総合)や、伏線を回収せず唐突に主人公を死亡させた最終回で大量の“アンチ遊川”を生んだ『○○妻』(日本テレビ系)のように、大多数の視聴者を不快にさせる作品も目立つ。今回の『ハケン占い師アタル』についても、視聴者の間では「大衆路線を行くのか、クソドラマ路線を突き進むのか」が注目されていた。
結論から言うと、どうやら少なくともクソドラマ路線ではなさそうだ。派遣社員として初めて社会で働き始めたアタルを演じる杉咲はニコニコしていて魅力的だし、何かあるたびに「記念に」とスマホで自撮り写真を撮るのも“不思議ちゃん”ぽくておもしろい。初めて働くはずなのにやたらと有能で仕事が早いというのも、謎めいていて今後の展開に期待を持たせる。肝心の占いでは、自分に自信がない正社員・神田和実(志田未来)にズバズバとキツいことを言い、そのおかげで和実が少し前向きになれたというエピソードが描かれた。
杉咲は、優柔不断で自分勝手に周囲を振り回すキャラを演じた『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)での評判があまり芳しくなかったが、今作についてはネットユーザーからも「花晴れより楽しそう」「花晴れみたいにキャンキャン騒ぐキャラじゃないから見やすい」「笑顔がかわいい」と好意的な声が上がった。
とはいえ、不安がないわけではない。好意的な声が多い一方で、杉咲に対しては「占い師モードの演技が弱い」といった批判も上がっている。杉咲演じるアタルはいったん占いを始めると急に態度が横柄になり、言葉使いもキツくなるのだが、これが「スピリチュアルな能力に裏打ちされた威厳」にはとても見えないのだ。ただ単に、普段はニコニコしている女の子が本性を現してヤンキー化したようにしか見えない。そのおかげで、このドラマの最大の見せ場であるはずの「アタルが正社員たちの悩みを解決していく」というシーンからカタルシスが得られず、むしろ「アタルって本当はこんな人間なのに、普段は猫をかぶっていて悪い奴だな」と感じてしまう。ドラマとしてこれは残念だ。まあ、それも伏線のひとつではあるのだろうが。
予告によれば、次回のアタルは間宮祥太朗演じるコネ入社社員・目黒円を占うようだ。おそらくその先も、1話に1人ずつ勤め先の社員を占ってアドバイスを送り、良い変化を与えていくというパターンが続くのだと思われる。この「パターン化」が視聴者に「安定感があって見やすい」と受け止められるか、あるいは「毎回同じ展開でつまらない」と思われるかは、かなりの部分、杉咲の演技にかかっているような気がする。うまくハマれば高視聴率を狙えるドラマだと思うので、期待している。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)