木村佳乃主演の連続テレビドラマ『後妻業』(フジテレビ系)の最終回である第9話が19日に放送され、平均視聴率は前回から0.6ポイント減の5.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったことがわかった。初回の8.7%がピークで、2話以降は5~6%台を推移。しかも最終回で自己ワーストをたたき出すという、不名誉な結果に終わった。
このドラマは、遺産相続目当てで資産家の老人の後妻に収まり、次々と大金をせしめる武内小夜子(木村佳乃)と、小夜子の正体を暴こうとする中瀬朋美(木村多江)の対決をメインとした物語。小夜子は相棒の柏木亨(高橋克典)と組んで資産家の中瀬耕造(泉谷しげる)の遺産をまんまと手にしたが、耕造の娘・朋美は小夜子を疑い、探偵の本多芳則(伊原剛志)に依頼して彼女の正体を探っている。
最終回の焦点は、ピンチに陥った小夜子と柏木が無事に切り抜けられるのか、逆の言い方をすると2人に罰が下るのかどうか、だったといえよう。やりたい放題にやってきた2人だが、第8話でとうとうそのツケが回り、暴力団の舟山組から慰謝料3,000万、探偵の本多からも口止め料3,000万を要求されてしまう。断れば2人はおそらく告発されて逮捕され、破滅してしまう。
そこで柏木は、起死回生の策として舟山組を逆に脅迫することを思い付き、舟山組が違法薬物の取引に関与している証拠の写真を入手。それをネタに1億円を要求する賭けに出た。ところが、取引の現場に柏木は現れず、そうこうしているうちにパトカーが駆け付け、舟山組の面々はあえなく逮捕。そのすきに、その場に居合わせた本多が1億円の入ったアタッシェケースを持ち去ってしまった――。
数週間後、本多は依頼主の朋美とクルーザーの上で祝杯を挙げていた。やはり柏木と小夜子には天罰が下ったという結末なのか……と誰もが思った。だが、なんと柏木も小夜子も同じクルーザーに乗り合わせており、みんなで和気あいあいと祝杯を挙げていたのだった。
どういうこと? と一瞬混乱したが、ここから怒涛の種明かしが始まった。いつからこの2組(柏木・小夜子組と本多・朋美組)が手を組んだのかという仕掛けも非常に面白かったし、本多が元マル暴の刑事だという設定を思わぬ形で回収するヤラレタ感もあって、爽快感が半端ない。最終回は疾走感もあり、意外性もあり、演出も編集も抜群で、最高に面白かったと評価したい。
ただ、裏を返せば「すべてを最終回に持ち越した(詰め込んだ)からこそ面白かった」といえる。このドラマが支持されなかった理由を挙げるとキリがないのだが、その筆頭は「話が間延びしているから」だったように思う。映画版では2時間で終わる話を連続ドラマにするのだから、どう考えても引き延ばせるだけ引き延ばさなければ尺が持たない。
その結果、「小夜子がうどんチェーンの会長をターゲットにするが、相手が認知症だったために、あきらめた」「朋美の夫が部下と不倫した」「それを知った朋美が本多と一夜の過ちを犯した」といったような、丸ごと省いてもストーリーに影響を与えないような無駄なエピソードが差し込まれる結果となった。さらに、小夜子と朋美がオーバーな演技で言い争うコントまがいの場面にも毎回結構な時間を割き、あからさまに時間を引き延ばしていた。
だが、こんな手法は視聴者にもすぐに見透かされてしまう。その結果が視聴率の大惨敗という結果に現れたといえよう。内容を詰め込んだ最終回が面白かったという事実を踏まえるなら、最初から2時間ドラマとして制作していたら、かなり良い作品になっただろうにと残念でならない。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)