日本で主流の動画投稿サイトとしては、YouTubeとニコニコ動画があげられる。最近は圧倒的にYouTubeが優勢で、ニコニコ動画に対しては「オワコン」と揶揄する声も少なくないが、動画クリエイターにとって重要な「どちらが稼げるか」という観点でニコニコ動画が再評価されているようだ。
総務省が昨年8月に発表した「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、YouTubeの利用率は全体で85.2%。10代~40代は9割を超え、50代でも8割以上、60代でも5割以上となっている。
それに対し、ニコニコ動画の利用率は全体で14.5%。20代は3割近くにのぼっているものの、50代・60代の利用率は10%を下回っている。この数字だけ見れば「勝負あった」と考えるのが妥当で、広告費などの視点でも「YouTuberのほうが稼ぎやすいのだろう」と推測したくなる。
実際、動画投稿で億万長者になったというようなケースは大半がYouTuberだ。
しかし、5月中旬にあるユーザーがTwitter上で「2年ほど動画投稿して得られた収益 ニコニコ動画:約50万円 YouTube:0円」と発表したことをきっかけとして、「どっちが稼げるか」論争が発生した。
一般人にはハードルが高いYouTube
YouTubeは「チャンネル登録者数が1000人以上、かつ過去1年以内の動画の合計再生時間が4000時間以上」という条件を満たさなければ収益化の申請すらできず、一般人が知名度ゼロの状態から条件を達成するのは一苦労となる。投稿者が多いので競争も激しく、視聴者を増やすためには企画や編集などに相当なコストと労力がかかるため、小遣い稼ぎ程度の副業感覚でやっても成功するのは容易でない。
一方、ニコニコ動画は条件を特にもうけておらず、開始すぐに収益化が可能だ。また、動画や生配信だけでなく、イラストや音源、3Dモデルなどあらゆるコンテンツの収益化に対応している。
さらに、YouTubeはコンプライアンス強化などの影響でAI判定による「誤BAN(問題ないはずのアカウントが停止されること)」や謎の広告停止が発生することがあり、専業の動画投稿者にとっては死活問題となるが、人力監視を併用するニコニコはそのようなケースがほとんどないとされる。
だが、先述したように利用者は圧倒的にYouTubeのほうが多く、パイ自体が違いすぎるので「それなりの額を稼ぐならYouTubeでは」とも思える。
ニコニコ代表が「棲み分け・使い分け」をすべきと提言
この疑問にひとつの答えを出したのが、ニコニコ動画の代表で運営会社ドワンゴの専務取締役COOでもある栗田穣崇氏だ。
栗田氏は26日付の自身のTwitterで「めっちゃ人気のある人だけがめっちゃ儲けられるのがYouTube。一定層に一定の人気がある人がそこそこ稼げるのがニコニコ」と指摘。「好きなことだけして生きていくのがYouTube。好きなこともしながら生きていくのがニコニコ」とも綴り、両サービスの違いを端的に表現した。
さらに「ニコニコで人気になってからYouTubeにいく。もしくは伸びるまではどちらもやる。が賢い」とし、ニコニコで人気となったクリエイターがYouTubeへ流出してしまうことについては「ニコニコは昔から永遠のインディーズであり実家」としている。
対立の構図ではなくクリエイターの状況に応じて「棲み分け・使い分け」をすべきとし、ネット上で「オワコン」と揶揄されていることに関しては「オワコンと言われ続けて15年。ニコニコはオワコン界の老舗です」とユーモラスに返した。
動画クリエイターというと、一般的にはYouTube、ショート動画ならTikTokというイメージが強いが、それらと違った長所や特徴を持つニコニコ動画に改めてスポットが当たったことで、クリエイターたちの選択肢が広がりそうだ。