若者の間で「テレビのニュースはYouTubeで見る」が浸透?新習慣の意外な実態
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
前編に続き、同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、若者のYouTube利用の実態について聞いた。
若者は「とりあえずYouTube」が浸透?
――前回、10代、30代、60代以上の3世代別に、LINE、Instagram、Twitter、YouTube、TikTokの5つの主要なSNS、動画アプリの平均利用時間を出していただき、10代は1日約2時間YouTubeを見ているという結果でした。
日影耕造氏(以下、日影) 20代までの若年層の利用動向を見ていると、YouTubeを単にエンタメとしてだけでなく、情報収集ツールとして使っているケースも見られます。在京キー局の、日テレNEWS(日本テレビ)、FNNプライムオンライン(フジテレビ)、ANNnewsCH(テレビ朝日)、TBS NEWS DIG Powered by JNN(TBS系)、テレ東BIZ(テレビ東京)が、その日のニュースをYouTube上で配信しています。
――TVerで放送と配信の同時化が夜間時間帯から始まりましたが(2022年5月時点)、TVerを見ずとも、また、テレビをつけずとも、テレビのニュースをYouTube上で確認できますよね。
日影 特にテレビ東京は、2022年1~3月で大きなトピックだったロシアのウクライナ侵攻において、YouTubeで『「ロシアの論理」で読み解くウクライナ危機【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】(2022年2月9日)』を配信、独自の解説で異例の661万回再生となっています(2022年4月時点)。テレビのニュースを見て、より深い解説を求めてYouTubeを見るケースもあるのではないかと思います。
中年世代が「とりあえずYahoo!のトップページを見る」、さらに上の世代が「とりあえずテレビのニュースを見る、新聞を広げる」という感覚で、若年層は「とりあえずYouTubeを見る」となっている印象も受けます。YouTubeは「メディア」としての役割もあるのではないかなと。
――42歳の私は、まさに「とりあえずYahoo」です。若年層にとって、YouTubeはそこまで大きな存在なのですね。「とりあえず」になるサービスは強いですね。
日影 また、TikTokはYouTubeと比べて圧倒的な短尺を差別化ポイントとしていましたが、今、ひとつの動画の上限時間は10分まで延びています。一方でYouTubeもYouTube ショートというショート動画サービスを出してきているので、今後、この二つの動画アプリの視聴時間の差は短くなってくるかもしれません。
――お互いを非常に意識し合った変更ですよね。
青春期に馴染んだサービスに一生引っ張られる?
以前、こちらの連載では、著名人や未成年が起こした事件についてグーグルで検索した際に、よく上位に出てくる「○○(著名人)の彼女は?年収は?結婚は?」「(未成年が起こした事件)の加害者の本名は?住所は?父親の職業は?」といった、しょうもないサイトを検索結果から除外する機能「ノイズレスサーチ」の開発者、パソ活氏に取材を行った。
その際、パソ活氏は、グーグル検索がおかしいのではなく、検索結果に対して「まとも」なことが書いてあるサイトが少ないということや、それを知った上でTwitterを使って情報検索するケースもある、と話をされていた。
「Twitterで情報検索」にはとても同意した。「マス的な知名度はないけれど、発言を信頼、信用している人」をフォローしている人は多いと思うし、私にもそういう人は何人もいる。時事問題などで、あの人はどう思うんだろう? と思ったときに見てみたりもするし、そういうときにTwitterはグーグルよりもずっとノイズがなく使いやすい。そして、今回の取材を通じ、そういった役割をYouTubeやTikTokなどの「動画」が担っている側面もあることがわかった。
動画よりニュースサイトのような文字媒体の方がすぐに探せて楽だと私は思うが、思えば、これも私自身が2000年すぎの「テキストサイト全盛期(ブログ文化よりも前)」に20代の青年期を過ごしたことが大きいように思う。今、若者がYouTuberやTikTokのイケてる配信者に憧れるように、若い私はイケてるテキストサイトの管理人に憧れていた。
青春期にどんなサービスに触れたかで、その人にとっての「使いやすい、なじみの、プライマリーな、『とりあえず』で選ぶサービス」は決まっていくように思う。「高齢者はテレビばかり見ている」というのはネガティブな文脈で使われがちだが、思えば、今の高齢層はテレビが文化に与える影響が今よりもはるかに強かった時期に青春期を過ごした人たちでもある。
となると、「テレビへの憧れ、信頼」が下の年代より強いともいえ、そう考えると「テレビばかり見ている」も、下の世代が抱く印象ほどネガティブなものでもないのかもしれない。あと50年したら、今は世に出ていない新しいサービスを使う若年層が「年寄りはYouTubeとTikTokばかり見ている」と笑う未来になるだろう。その頃までに、それらのサービスがあればの話だが。
かつてのテレビのように、今の社会を変えていく起爆剤の一つがスマートフォンやアプリであるのは間違いないし、それを牽引するのが若年層のエネルギーであることも間違いない。どうしても自分の青春とともにあったサービスが一番おもしろくてセンスがあって輝いていたと思ってしまいがちなため、中高年層ほど今の若年層が夢中なものに対し「あんなもの」という偏見が強くなりがちだが、そこは老害しぐさを出さず、「へえー」という姿勢は忘れずにいたい。
(構成=石徹白未亜/ライター)
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