「どれだけ飲んでも食べても3000円を超えたお会計は頂きません!」を売り文句に“元祖定額制”を掲げる、「定楽屋」(ていがくや)という居酒屋をご存知だろうか。
基本的には2時間制で、いくら料理を注文しても、一人3000円(税別、以下同)しか請求されないシステム。仮に4000円分を完食すれば1000円分がお得になるわけなので、自分で料理を取りに行くビュッフェスタイルの食べ放題に比べ、ちゃんと元が取れたのかどうかが単純明快だといえるだろう。
運営元は京都に本社を構える株式会社Styleで、2018年2月、愛媛・松山に1号店を出店。今年1月現在、北は北海道から南は熊本まで、全国10店舗を展開している。日に日にメディア露出を増やしており、模倣店が出現するほどの反響があるそうだが、首都圏から最も近いのは「名古屋金山店」(愛知県名古屋市中区)なので、まだ世間的な知名度はいまひとつかもしれない。
そこで今回、名古屋を旅行する機会があった関東在住の筆者は、現地の友人を誘い、実際に定楽屋を訪問してみることにした。たとえ3000円でたらふく飲み食いできても、料理のクオリティが低ければ意味はないし、そもそも2時間制なので、注文してからの提供スピードも気になるところ。果たして定楽屋の実力はいかほどのものなのか、レポートしたい。
メニューは提供が早いもの・遅いものの差が激しい?
定楽屋の名古屋金山店は、各線金山駅から徒歩約3分の、飲食店が複数入ったビルの6階にある。週末の夜ということもあってか、店内は笑い声に満ちていたものの、21時半の段階で待ち客はナシ。事前に予約しておいた筆者たちは、すんなり入店できた。
店員から簡単なシステム説明を受けたあと、メニュー表を眺める。料理は「枝豆」(280円)や「たこわさび」(480円)といった定番おつまみはもちろん、サラダ、おでん、焼鳥、揚げ物、〆の麺類&ご飯、デザート、さらには“名古屋めし”まで多種多様。ドリンクもビール、ハイボール、サワー、果実酒、日本酒、焼酎、ワインと一通りのものは揃っており、カクテルにいたっては全72種類もあるようだ。
どれも食欲をそそられたが、まずはファーストドリンクと、公式サイトで“手作り名物料理”だとオススメされていた「王様つくね(大葉おろしポン酢)」(680円)と「柔らか焼鳥(自家製ネギ塩ダレ)」(680円)を注文。あとは友人のチョイスで「特製だし巻き」(480円)と、旅行気分を満喫したかった筆者の希望で、名古屋めしの「どて煮」(380円)と「手羽先」(380円)も頼んだ。
ほどなくして筆者の「レモネード」(480円)、そして友人の「ザ・プレミアムモルツ」(480円)が到着し、二人で乾杯。飲み放題コースが用意されていても生ビールは別料金という居酒屋もあるが、定楽屋にはそういった例外はないのが嬉しい。
続いて、焼鳥が運ばれてきた。鉄板に乗っておりアツアツで、しょっぱめの味付けにお酒が進む。他の料理にも、必然的に期待が高まるというものだ。
ところが、焼鳥と一緒に注文した料理がテーブルに出揃ったのは、そこから20分近く経った頃。一つひとつの料理に手を抜いていないという証なのだろうが、この調子だと、メニューによっては提供までかなり待たされてしまいそうである。
もっとも、過度な食べ残し・飲み残しは代金を別途請求されるらしいので、むやみやたらに注文するわけにはいかない。しかし2時間という制限内に元を取り、なおかつ満腹になりたいなら、値段は安くても、すぐに出てきそうなメニューを中心に攻めるのが賢明かもしれない。
事実、「うずらたまご」(380円)と「塩だれキャベツ」(280円)を頼んでみると、5分足らずで素早く提供された。はじめは「よくあるおつまみだし」とあえてスルーしていたのだが、いざ食べてみると、シンプルにおいしい。次の料理が来るまでのつなぎとして、大いに重宝したものである。
何だかんだで満腹に…いったい何円分がタダになった?
入店から1時間ほど経過した時点で、ここまでの注文金額を計算してみた。フード8品、ドリンク4杯で合計5860円。一人あたり3000円の壁を突破し、“定額制”の恩恵を受けられるようになるまではもう一息だ。
口の中を一度サッパリさせるために「杏仁豆腐」(380円)を食べたのち、名古屋めしである「小倉トースト」(380円)と「きしめん」(480円)を堪能した筆者。定楽屋の小倉トーストはフランスパンを使っているらしく、愛知出身の友人は「これは小倉トーストじゃない」とツッコミを入れていたが、給食の揚げパンが懐かしくなる味わいで、筆者にとっては充分アリだった。
なお、定楽屋は30分前がラストオーダーで、一人につきフード・ドリンク1品ずつしか頼めないとのこと。店員が最後の注文を取りにくる前に先手を打ち、もっとたくさんの料理を頼むこともできたのだが、筆者・友人とも、すでに胃袋は限界ギリギリ。〆の「鶏そぼろ茶漬け」(580円)と「チャンジャ茶漬け」(480円)、そしてお互い4杯目となるドリンクをラストオーダーとし、この日の食事を終えた。
改めて注文金額を計算すると、フード13品、ドリンク8杯で合計9800円。本来は一人あたり4900円のところ、“定額制”のおかげで請求は3000円となり、1900円分がタダになったといえる。しっかり元を取ることに成功したかたちだ。
前半こそ提供スピードの遅さに不満を覚えたものの、あれ以上ハイペースで料理が出てきたら、もしかすると食べ切れなかったかもしれない。特に680円の王様つくねは、横幅が爪楊枝と同じくらいのサイズ感で、非常にボリューミー。一人1個ではなく、1個を友人と二人で分けるのがちょうどよかった。
また、生ビールが苦手な筆者からすると、カクテルの充実ぶりが高ポイント。先述したように全72種類あり、大衆居酒屋ではあまり見かけない「バナナ」や「ヨーグルト」といったリキュールは、女性ウケもすることだろう。
感想をまとめると、予算を決めてガッツリ飲み食いしたい人にとって、定楽屋の使い勝手はバツグンではないか。2時間で物足りなければ30分500円で延長も可能だし、2時間飲み放題に料理4品がついて2000円の「2次会コース」もあるそうだ。
ちなみに、店の出入口付近には「本当は会計○円だったのに○円に値引きされた」という実績を示す、客たちの写真やレシートが。
過去には7万7730円分もの値引きを実現させた猛者の団体客もいたようで、二人で3800円分しか値引きされなかった自分たちをちっぽけに感じてしまう。早く首都圏にも出店してほしいし、そのときは料理の注文順を考慮するなど、今回以上に“定額制”を楽しみ尽くしたいものである。
(文=A4studio)