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田中俊之「生きづらい中年男のための処方箋」

「ポジティブ=正しい」「なんでも美談」「無駄=悪」は間違い…人生を不幸にする!

構成=編集部

なんでも美談に仕立てあげたがる世の中

山田 『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)を書いたことで、引きこもりに関する取材なんかもいただくようになったのですが、世の中には「美談にしたい」というバイアスが強い。だから、「引きこもっていた時期は、完全に無駄でしたね」と言えない空気があるんですよね。でも、僕は「今振り返ると、あの時期が自分の糧になっている」「血肉になっている」とは思えないし、言いたくもないんですよ。

田中 中学校では先生から「おそらく東大に行けます」と言われた山田少年ですから、東大を出てお笑いの道に進んでもよかったわけですよね。

「ポジティブ=正しい」「なんでも美談」「無駄=悪」は間違い…人生を不幸にする!の画像2田中俊之氏

山田 あくまでも「僕にとっては」ということですが、完全に無駄でした。やっぱり、友達と一緒に遊んだり勉強したりしていたほうがよかったと思うし。「『無駄』と言うことが悪」と考えるほうがおかしいと思います。「無駄があってもええやん」って思うから、「完全に無駄な時期がありましたけど、まぁ、今は普通に生きてます」でいいと思うんですよ。

田中 「この苦しい時期が、いずれ糧になる」って、言い換えると「今はダメな状態ですよ」「早く普通のルートに戻りなさい」ということですからね。だから、現実的に苦しい状況にいる人は、そんなことを言われると、かえって追い詰められると思います。でも、男爵の言い方は「今はダメかもしれないけど、それでも生きていくことはできるし、幸せなこともありますよ」ということですよね。

山田 「無駄だった=否定」にはならないと思うのですが、そういった空気が広がっているのは「こうでなければならない」「ポジティブなものが正しい」という刷り込みの弊害だと思います。なんでもかんでも帳尻を合わせて美談にしなきゃいけない傾向がいいこととは、思えないです。

ノーギャラのラジオ出演で得たものとは?

田中 放送400回を迎えた『髭男爵 山田ルイ53世のルネッサンスラジオ』(文化放送)をはじめ、今3本のレギュラー番組を持っていますが、ラジオはかなりお好きですよね?

山田 子供の頃からラジオはたくさん聞いていたので、この世界に入った時に「やりたいな」と思っていました。特に『ルネラジ』は最初のラジオ仕事なので、すごく思い入れがありますね。

田中 『ルネラジ』は地上波での放送は限られているし、一時はノーギャラで出演していたんですよね?

山田 紆余曲折があって、ノーギャラの時期もありました。「ギャラが発生しないものは仕事じゃない」ということで、マネージャーも現場に来なくなり、「30歳超えて、こんな屈辱にまみれることがあんねんな」と思いながらも続けていたら、幸いなことにリスナーも増えてきて、なんとか継続しています。

田中 すぐに収入やキャリアにつながらなくても、こだわりを持って仕事を続けることで、「男爵のしゃべりは面白い」と評価されて、新たな仕事が生まれている。これは、一般の会社員の方々にも参考になる姿勢だと思います。

山田 ほかの2本に関しては、『ルネラジ』があったからこそ、オファーにつながったと思います。

『ヒキコモリ漂流記』 神童→名門中学に合格→引きこもり→大検取得で大学へ→失踪→上京して芸人に→借金苦から債務整理→そして、復活!人生いつだってやり直せる!?髭男爵が七転び八起きの人生から学んだやり直しのルール。 amazon_associate_logo.jpg
『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』 男は不自由だ。子どもの頃から何かを成し遂げるべく競争するように育てられ、働くのが当たり前のように求められてきた。では、定年を迎えたら解放されるのか。否、「年収一千万の俺」「部長の俺」ではなくなったとき、「俺って何だったんだろう」と突然、喪失感と虚無感に襲われ、趣味の世界ですら、やおら競争を始めてしまうのだ。本書は、タレント・エッセイストとして活躍する小島慶子と、男性学の専門家・田中俊之が、さまざまなテーマで男の生きづらさについて議論する。男が変わることで、女も変わる。男女はコインの裏表(うらおもて)なのだ。 amazon_associate_logo.jpg

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