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妻や夫の不倫を認める“オープンマリッジ”とは?婚外恋愛を選択する夫婦の事情

文=田中慧/清談社
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「gettyimages」より

 既婚者にとって「不倫」のリスクは大きくなるばかりだ。政治家や芸能人、アスリートなどの場合はメディアで厳しく追及され、キャリアを左右するほど断罪されることもあり、一般社会でも不倫に対する風当たりは強い。

 一方で、結婚していながらもパートナーの恋愛を容認する「オープンマリッジ」の認知が徐々に高まっているという。「結婚したら生涯、その人と添い遂げる」という常識に縛られない新たな夫婦関係のあり方について、国内最大級の既婚者マッチングサービス「既婚者クラブ」の副管理人・あいこ氏に話を聞いた。

婚外に恋人を持つ「オープンマリッジ」とは

「歴史を振り返れば、明治時代初期くらいまでは『お妾さん』など、日本でも事実上の一夫多妻が慣行されていたこともありましたが、現代では不倫は隠すべき後ろ暗い行為とされています。しかし今、1970年代にアメリカの社会学者のオニール夫妻によって提唱された、婚姻関係を保ったままで夫や妻以外に恋人をつくることを夫婦で容認し合う『オープンマリッジ』という倫理観が、世界的に広がりつつあります。オープンマリッジで婚外の恋人の存在をオープンにするのはあくまでパートナーに対してだけで、知人や親戚などにまで宣言するものではありません」

 そう解説するのは、既婚者クラブの副管理人を務めるあいこ氏だ。既婚者クラブは独身者は参加できないマッチングサイトで、結婚していながらもさまざまな事情でパートナー以外の交際相手を求める人たちの出会いの場となっている。パートナーに秘密で登録している人もいるが、なかには夫婦で利用しているケースも存在するという。

 しかし、結婚相手以外と恋愛をするオープンマリッジは、いわゆる“不倫”とどう違うのだろうか。

「不倫はパートナーに隠しながらコソコソと恋愛をするものなので、バレたら離婚につながるなど、人生設計が崩れるリスクがあります。一方、オープンマリッジはパートナーが認めた上でほかの人と恋愛することができるため、気持ちの上で結婚相手を騙すような罪悪感を持つ必要はありません」(あいこ氏)

 近年、ドラマや漫画で「セカンドパートナー」や「婚外恋愛」などが取り上げられ始めているが、オープンマリッジはそれらと近しい関係性だ。ただ、前者は恋愛感情だけで性交渉がないのに対し、オープンマリッジは合意の上で交際相手との性交渉も認める関係となる。

 また、オープンマリッジは夫婦が性的パートナーを交換する“スワッピング”とも異なる。スワッピングは性的嗜好の一種で「多くの人とさまざまなプレイがしたい」という欲求によるものと定義される。対して、オープンマリッジは恋愛の一環として恋人に選んだ1人だけと性交渉を含んだ交際をする関係性なのだ。

「オープンマリッジでは、夫婦がともに恋人をつくる場合もあれば、どちらか一方のみが婚外関係をつくることもあり、夫婦の価値観や事情によって関係性はさまざまです。恋愛と同様に、夫婦の形も千差万別になっていると言えます」(同)

オープンマリッジを選択する夫婦の事情

 では、オープンマリッジを取り入れている夫婦とは、いったいどんな人たちなのだろうか。実際に既婚者クラブに登録した金子和幸さん(仮名・38歳)の体験談を紹介したい。

「結婚5年目の妻(37歳)に申し出た上で、今年6月から既婚者クラブに登録しました。夫婦の関係はすでに口喧嘩すらしないほど冷え切っていて、もはや互いを1人の男性・女性として見ることはできない状況だったんです。ただ、今年3歳になる息子の将来を考え、離婚はしないほうがいいという意見は一致していました。そんなころ、ネットでオープンマリッジという関係性を知り、『家族のつながりを保ったままで、恋愛のドキドキする気持ちを味わえるのなら』と、素直に妻に相談しました。妻から理解してもらうのは難しいかと思っていましたが、『私たちの間に愛がないのはわかっている。親としての責任は捨てないでください』と、案外すんなり了承してもらえました」(金子氏)

 あいこ氏によると、オープンマリッジを選択する夫婦には子どもがいる場合もあり、子育てが落ち着いて自由に使える時間が増えてきたタイミングでスタートする傾向があるそうだ。

 加えて、子育ても仕事も一息ついた熟年夫婦が導入することも多いという特徴がある。実際、既婚者クラブの利用者は30~50代がメインで、なかには70代の利用者もいるという。

「仕事や家庭以外の趣味や居場所を求めることは一般的ですが、オープンマリッジを選ぶ人もそれと同じで、今までとは違う新たな居場所や関係性を求めているんだと思います。また、新たに恋愛することで、人生そのものに活力が生まれるという効果もあるでしょう」(あいこ氏)

 また、オープンマリッジに踏み切る理由として、セックスレスの問題も大きいという。

「既婚者クラブを利用している夫婦のなかには、夫のED(勃起不全)が原因でセックスができず、『自分では妻を満足させてあげられない』という夫の意向でオープンマリッジをスタートさせたご夫婦もいます。セックスに関してはパーソナルな問題のため、個々で事情が違うのに、画一的に『不倫はダメ』と言い切ってしまうことは、まるで臭いものに蓋をするように目を背けている状態だと思います」(同)

 なかには、婚外相手との交際を経て、改めてパートナーの良さを知るケースもあるという。あくまでパートナーの欲求を大切にする方法を話し合った結果として、オープンマリッジを選ぶ人が出てきているのだ。

オープンマリッジを選択するときに守るべきこと

 互いを思いやった末の関係性とはいえ、オープンマリッジを取り入れた夫婦が必ずしも円満な関係を続けられるわけではない。「家庭を最優先する」と決めてオープンマリッジを始めても、徐々に恋人のほうに気持ちが入り、夫婦関係に亀裂が入ってしまうこともある。

「オープンマリッジは、婚姻関係にあるパートナーを傷つけないように気を使い合うことが大前提です。『恋人と会うときは事前に連絡する』『月に3回までしか会わない』など、夫婦それぞれの価値観に合ったルールを決めておくことが大切です。不倫を認めるとはいえ、パートナーをないがしろにしていいわけではありません」(同)

 最後に、オープンマリッジの未来について聞いた。

「オープンマリッジの関係性がうまくいかなかったり、そもそも考え方自体が受け入れられなかったりする人も多いので、すぐに浸透していくものではないと思います。ただ、夫婦には、それぞれにそうしなければならない理由があり、その家庭にしかわからない事情が複雑にからみ合っている。『不倫は悪』と簡単に片付けないで、夫婦のあり方のひとつとして、徐々に認知されてほしいですね」(同)

「心に決めた1人を愛す」という美学が浸透している日本では、オープンマリッジが広まるには、まだまだ時間がかかりそうだ。しかし、これまでの考え方にとらわれずに、それぞれの価値観を尊重した関係性を築く夫婦も増えていくのかもしれない。

※注:本記事は不倫を助長・推奨するものではありません。

(文=田中慧/清談社)

●「既婚者クラブ」
https://kikonclub.com/
https://e-venz.com/column/14087/

清談社

清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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