日焼け止めクリーム、発がん性の懸念ある成分が体内に吸収の恐れ…長時間の使用厳禁
陽射しが強くなり、日焼けが気になる季節となりました。日光浴の是非については、いろいろ議論のあるところですが、今回は「日焼け止めクリーム」に関する意外な話題をお届けします。
皮膚がんの原因の大部分は日光によって発生するものですが、皮膚に限らずすべてのがんの0.5パーセントにかかわっているともされます。発がんのリスクは、紫外線の強さと浴びた時間に比例し、海水浴などで皮膚がただれるほどに日焼けをすると、皮膚がんになるリスクもいっきに高まります。とくに、30歳より前に浴びた紫外線の量が多いと皮膚がんになりやすいこともわかっています。
日光の紫外線が強いのは、真夏よりも春先から夏至にかけての時期ですが、雪山で反射した紫外線による雪焼けもよく知られているところです。海外旅行では、赤道付近や快晴の続く地域が要注意です。
そこで頭に浮かぶのが日焼け止めクリームです。皮膚がんの多いオーストラリアでは、国民に向けて「片腕あるいは片足ごとにスプーン1杯以上のクリームをぬること、少なくとも2時間ごとにぬりなおすこと、最低でもSPF30という性能のクリームを使うこと」などを勧めています【注1】。
健康被害リスク
その日焼け止めクリームについて、米国から意外な研究発表がなされました【注2】。日焼け止めクリームを使い続けると、紫外線をカットするために配合されている成分が皮膚から吸収され、思わぬ健康被害をきたすかもしれないという話なのです。
その実験は、男女同数の計24人の協力をえて7日間かけて行われました。まず市販の日焼け止めクリームを、添付文書にしたがって全身皮膚の75パーセントに、体表面積1平方センチメートル当たり2ミリグラムの割合でぬり(私の計算で計24グラムくらいになる)、これを1日に4回、4日間にわたり繰り返したそうです。また7日間にわたり、計30回もの採血検査を受けました。クリームの成分が、どれくらい体内に吸収されたかを調べるためです。データにばらつきを生じさせないための配慮として、この間、協力者にはいっさい日光を浴びないようにしてもらいました。もちろん皮膚病、アレルギーなどがある人は含まれていません。
スプレー式の2種類とローション1種類、それにクリーム1種類の4商品を比べるため、参加者を無作為に4つのグループに分けて実験が行われましたが、終了までに全員が湿疹、かゆみ、汗腺のつまりなどの皮膚トラブルに見舞われました。
これは想定内の出来事ですが、問題は紫外線をカットするための成分がどれくらい血液中に入り込んだのかです。調べた成分は、アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、それにエカムスールの4つでした。製品によっては、このうちどれかが含まれていないものもありましたが、少なくとも配合されていた成分はすべて、血液1ミリリットル当たり0.5ナノグラム以上の濃度で検出されたということです。これは、発がん物質などのリスクを調べる際、要注意とされるデッドラインを超える値です。スプレーやクリームなどによる違いはありませんでした。
実験を行った研究者たちが問題にしたのは、これら4つの成分が、市販日焼け止めクリームの配合成分として米国政府機関(FDA)より認められているにもかかわらず、安全性がちっとも検証されていないという点でした【注3】。事実、一部の成分については、発がん性やホルモン器官への影響を示唆した研究データも存在します。
話は以上ですが、私の結論は、日焼け止めクリームを使うなということでは決してなく、炎天下での作業を余儀なくされている人はなるべく肌を露出しないこと、また青空のもとでレジャーを楽しむ人は日焼け止めクリームを添付文書の通り十分にぬり、流れ落ちてしまう2時間以内には日陰に入るようにしたほうがいい、ということです。長時間ぬったままにせず、シャワーなどでよく洗い落とすことも忘れずに。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)
参考文献
【注1】Whiteman DC, et al., When to apply sunscreen: a consensus statement for Australia and New Zealand. Aust N Z J Public Health 43: 171-175, 2019.
【注2】Matta MK, et al., Effect of sunscreen application under maximal use conditions on plasma concentration of sunscreen active ingredients. a randomized clinical trial. JAMA May 6, doi:10.1001, 2019.
【注3】FDA, Sunscreen drug products for over-the-counter human use; proposal to amend and lift stay on monograph preliminary regulatory impact analysis. Fed Regist: 84 FR 6204, 2019.