長谷工グループの、販売部門となる長谷工アーベストが発表した「住みたい街(駅)ランキング2022」(東京23区版)によると、1位は前年2位の「池袋」。前年1位の「中野」が2位、3位は前年同様に「新宿」という結果になった。この3つの街の共通点は再開発だ。また、5位「北千住」、7位「赤羽」、8位「錦糸町」と意外な街も上位にランクインしている。同調査について、長谷工アーベスト東京支社販売企画部門市場調査部部長の林祐美子氏に聞いた。
ファミリー層を呼び込んだ「池袋」の成功
――トップ3は「池袋」「中野」「新宿」という結果になりました。
林祐美子氏(以下、林) 池袋は以前から芸術施設が充実した街として知られていますが、最近は駅周辺にあるイケ・サンパーク(としまみどりの防災公園)の隣に「としまキッズパーク」が誕生するなど、ファミリー層にもフォーカスした街づくりが進んでいます。また、トキワ荘があった事などもあり、マンガやアニメの聖地としての取り組みなど、文化面にも力を入れています。池袋のある豊島区では、2014年に東京23区で唯一「消滅可能性都市」と指摘されたことで、大学を誘致するなど、まず若い世代に来てもらうための取り組みを加速させており、2015年には「豊島区国際アート・カルチャー都市構想」を発表、そうした行政を主体とした街づくりがランクアップにつながっています。
中野の人気が高いのは、新宿など都心へのアクセスが良く、駅周りに買い物環境が充実している点が大きいでしょう。駅から少し離れると静かな住宅街もありファミリー層からの人気も高く、新たなランドマークとして駅前再開発が進んでいることも高評価の一つとなっています。
新宿については、路線が多く利便性の高さが評価されていますが、かつて分断されているともいわれた西口、東口をつなげる東西通路が開通するなど、更なる利便性の向上が期待されています。歌舞伎町に代表される繁華街のイメージも再開発の進行により、変わってきており、居住地としての評価が高まってきています。オフィス街のイメージが強かった西新宿エリアにタワーマンションが複数供給されてきましたが、販売は好調でした。職住近接が叶う事も、街の魅力の一つとなっています。
――足立区の「北千住」が5位にランクインしています。
林 昭和の時代、足立区には大学どころか短大もなかったのですが、平成に入ってから積極的に大学誘致に舵を切りました。今や北千住駅前の東京電機大学のほか、区内に6つの大学があり、官民連携事業に取り組んでいます。大学を誘致すると、周辺地域に若い居住者が増えます。若い人に来てもらうための取り組みとして、足立区の大学誘致は成功していると思います。
――6位の「自由が丘」は、かつてはもっと上位にランクインしていた印象がありますが。
林 それは、自由が丘が成熟した街であるがゆえの相対評価と受け止めています。他の街が再開発などによりメディアに取り上げられ、ランクアップする。その結果、自由が丘の街としての魅力は変わりませんが、相対的にランクが下がったということです。
――7位の「赤羽」は、現実的に住める街と考える方が多いのではないでしょうか。
林 北千住と同じくメディアに取り上げられたほか、漫画『東京都北区赤羽』(清野とおる著)の舞台になったことが大きいでしょう。現在の若者は利便性を好む一方で、下町のディープな街並みにも関心を寄せています。
――8位の「錦糸町」は直近2年の10位圏外からランクインしましたね。
林 かつては繁華街のイメージが強かったのですが、近年は駅北側の開発が進んだ事で街並みが整備され、駅周りのイメージは大きく変わりました。都心部へのアクセスが良いため、ファミリー層の流入につながっています。
――今後の東京23区の変化をどうみていますか。
林 新宿や渋谷など、東京23区内においては、再開発が活発に行われています。渋谷では、再開発全体の完成が2027年となっており、街の全体像が体感できる2030年頃にかけて、更に吸引力が高まってくるでしょう。また足立区は、従来のネガティブなイメージを払拭するため、官民一体となっての防犯運動の実施や、独自の子育て支援制度を設けるなど、ファミリー層に優しい街へと変貌しつつあります。このように鉄道会社や地方自治体の取り組みによって街がブラッシュアップされる動きは、今後も続いていくでしょう。