香り豊かでコクのあるルーとごはんのマッチングで老若男女に愛されているカレーライス。そんなカレーを手軽に提供してくれているのが、全国に数多あるコンビニチェーン店だ。
お弁当コーナーに並んでいるチルドカレーは、手頃な価格でありながら、自宅のレンジで温めるだけで本格的な味わいが簡単に楽しめると良品である。
そこで今回はセブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンのチルドカレーを実際に購入して食べ比べ。そのうえでコストパフォーマンスが一番高いと感じた商品を独断で選出した。
ちなみに、業界各社は季節ごとに印象的なコラボカレーや限定カレーを出しているが、今回はなるべく比較に公平性を持たせるために、そうした商品はあえて選ばず、各社が販売しているベーシックなカレーを選ばせてもらった。本記事の総評パートでは、“コンビニチルドカレーベスト1”を決めているので、ぜひ最後まで読んでほしい。
セブン「欧風ビーフカレー」/594円(税込、以下同)
まず紹介をするのは、コンビニ業界シェア堂々の第1位であるセブンのカレーだ。
全国のセブンで販売されているこの「欧風ビーフカレー」は、玉ねぎ、にんじん、セロリといった野菜のペーストに、ワイン、フルーツチャツネ、そしてクミン、シナモン、山椒といった、30種類以上のスパイスを配合したというこだわりぶり。
四角い容器は二重底となっており、上部にはカレールー、その下にはごはんが敷き詰められている。調理はビニール包装をつけたまま、500wのレンジで4分加熱するだけ。
その名のとおり、加熱すると欧風のコクのあるカレーの香りが辺りに一気に広がった。特徴的なのは、1.5cm角くらいのホロホロに煮込まれた大きな牛肉が4個ほど入っている点。ほかに具材はないのだが、この肉の存在感だけでも充分、食欲が刺激される。
一口食べると、スパイスの香りや刺激よりも桃やバナナを思わせるフルーツチャツネの甘い香り、そして牛肉のコクが印象に残った。正直、最初は少々びっくりするくらい甘味を強く感じたのだが、慣れてくるとこれがクセになるのだ。
ごはんも粒が立っており、炊きたてのような香りもして好印象。最初はインパクト弱めに思えたスパイスの刺激だが、食べ進めるうちにボディブローのように際立ってきて、意外にも食べ終わったときは舌がピリピリとしていた。王道な見た目に反して、良い意味でトリッキーな味が記憶に残る一皿だった。
ファミマ「30種類以上のスパイス使用こだわりカレー」/328円
次は、業界シェア第2位のファミマが提供しているチルドカレーを紹介していこう。
セブンもローソンも600円前後するところ、300円台前半というこのファミマのカレーは、驚異的なリーズナブルさに感じる。
本品は豚肉ベースのカレーとなっているようで、玉ねぎ、砂糖、ウスターソースのほかに、詳細が伏せられた“香辛料ミックス”が入っている。品名で“30種類以上のスパイス使用”と謳っているように、このスパイスには強いこだわりがあるようだ。
楕円形の容器には仕切りが存在せず、片側にごはん、もう片側にルーが注がれており、ごはんの上には少量の福神漬けがトッピングされている。表示に従って500wのレンジで2分15秒加熱すれば出来上がりだ。クラシカルな“カレーライス”のイメージに近いビジュアルだが、味も王道系なのだろうか。
香りはというと、ウスターソース系のフルーティーさと、かなり強めのスパイスの刺激がメインになっている印象。具材に関しては、正直“残念”と言わざるを得ない。というのも、切れ端のような極小の豚肉がパラパラとあるだけで、ほぼ具材がなかったからだ。
肝心の味だが、香味野菜を思わせる甘みがかなり特徴的で、お肉のコクというよりも野菜のうまみをメイン据えているような印象を覚えた。ただ、この甘さが食べ進めるごとに喉に蓄積していき、最後のほうは少々胸焼けを覚えてしまったのが残念。またスパイスの刺激も喉に蓄積していくので、食べ終わると甘さと刺激が口の中で飛び交う不思議な感覚に陥った。ごはんに関してはしっかりと米粒が立っており、非常に美味しくいただけた。
ローソン「欧風ビーフカレー」/646円
最後はシェア第3位のローソンが提供しているチルドカレーを実食していこう。
奇しくもセブンと全く同じ品名となったローソンの「欧風ビーフカレー」は、デミグラスソースで煮込んだホロホロの牛肉が特徴的。ラベルを見ても“カレーソース”とあるだけで、どんなスパイスをどれくらい使っているのか教えてくれないが、少なくとも“欧風”とあるように、スパイスよりもお肉や野菜のうまみを前面に押し出した味わいなのだろう。
容器もセブンと近しい二重底スタイルだが、楕円形のデザインでカレーとルーを半々に分けた盛りつけは、ファミマを彷彿とさせる。レンジの加熱時間は500wで3分30秒。熱々の容器の端を持って、火傷しないように慎重にビニール包装を剥がしたら、いざ実食。
デミグラスソースのコク深い香りと、ほんのりと感じる焦げの香りが非常に食欲をそそる。色合いもかなり深いブラウンで、控えめに感じられるスパイスの刺激的な香りがなければ、ビーフシチューやハヤシライスにも思える。具材は2cm角の大振りの牛肉が2個と、玉ねぎの切れ端がいくつか確認できた。
食べて最初に感じたのは、ホロホロ食感でありながら、しっかりとうまみの残った牛肉だ。量は少ないが、その肉質のクオリティはかなり高い。ごはんはもっちりと柔らかめの食感。ルーは、赤ワインと焦がし玉ねぎを基調としたデミグラスソースの深みと甘さが全体をまとめており、味の一体感が高かった。スパイスはかなり控えめ。ルーのうまみを引き立てる脇役に回っており、後味にも刺激はあまり残らなかった。
総評…1位はセブン
ここからは、今回の総評を行っていきたい。
コストの面では、ファミマの「30種類以上のスパイス使用こだわりカレー」が、328円と圧倒的にずば抜けた安さを誇っており、他の追随を許さない一人勝ち状態となった。646円だったローソンの約半額というのはストロングポイントといえる。しかし、そんな安さを感じさせない味のバランス感覚や食べ応えがあればよかったのだが、個人的には“値段相応”の味に落ち着いてしまった感は否めない。
一方、ローソンの「欧風ビーフカレー」だが、味の完成度でいえば今回一番高い印象を受けた。肉と野菜を時間かけて調理した奥行きのあるコクとうまみからは、強いこだわりが感じ取れた。だが、少々スパイスの刺激が控えめ過ぎたことと、きれいにまとまり過ぎているせいで、値段の割に記憶に残りづらいのが気になった。
ということで、今回“コンビニチルドカレーベスト1”に選びたいのは、セブンのチルドカレーだ。まず食べたときの驚き、そしてそこで終わらないで“また食べたい”と思わせる深いコクと、バランスの良いスパイスの刺激。高過ぎず安過ぎもしない価格設定で、最高の完成度を引き出している逸品だった。
目指している方向性が三者三様で、ひとつとして似た味がなかったコンビニのチルドカレー。気になった方は、実際にその味の違いを食べ比べてみてほしい。