岩手県の名物料理として有名な「わんこそば」。地元では、観光客へのパフォーマンスとして手早くつぎ足したり、食べ終えたお椀を目の前に重ねたりする店もあり、ただ食べて楽しむだけでなく、イベント要素も強い名物だ。
全国には岩手県にわざわざ赴かなくとも「わんこそば」を食べられる場所がいくつか存在しているが、東京でもセルフで楽しめる場所が2022年6月に誕生した。新宿の歌舞伎町に店を構える「アミューズメントわんこそば くるくるわんこ」は、史上初の回転わんこそば店。お椀に入ったそばをベルトコンベアで提供し、コロナ禍でも安心できる環境を実現した、いわば回転寿司のそばバージョン。立ち食いということもあり、スタンダードな「わんこそば」とは一味違う、新しいスタイルを確立させている。
そこで今回は同店に直接おもむき、店内のシステムや値段に見合ったサービスなのかを忖度なしにレポートしていきたい。
「THE和風」なコンセプトの店内
店舗があるのはJR新宿駅東口から徒歩で約10分、歌舞伎町一番街を抜けた先にあるビルの5階。エレベーターで5階まで上がり、扉が開くとすぐ店内へ入ることができる。
店内には「冨嶽三十六景」や和傘などが飾られており、日本らしさを感じることができる。広さはカウンターが20席前後で、筆者が来店した平日の19時頃は店内に先客はいなかったが、店員によると曜日と時間帯によっては混み合うこともあるそう。
店に入ると、まずは店員から説明を受けながらタブレットで注文することに。通常メニューは「通常わんこ(40分)」で3300円(税込、以下同)、ネギとわさびとしょうがの薬味付きとなっている。その他には、5分間でのチャレンジメニューである「クイックわんこ」もある。
さらに、もみじおろしやなめ茸など6種類のトッピングはプラス100円で選ぶことができ、味変アイテムとして利用可能。その他にも、ソフトドリンクやアルコールの提供もあり、飲み物もある程度用意されている。ちなみに水はセルフサービスとなっていて、無料で飲むことができる。
会計は前払い制となっていて、筆者は「通常わんこ」とトッピングの「きざみのり」、同行した友人は「通常わんこ」を注文し、2人で総額6700円。やはり歌舞伎町という土地柄のためか、少々値段が高い印象を受けるが、はたして内容はどうなのだろうか。
食べやすさに特化
カウンターにつくと、まずは店員から「わんこそば」にチャレンジする際の諸注意を受け、注意事項に同意した上でタブレットにて署名を行う。席を離れた時点でチャレンジ終了となってしまうため、事前に水の準備やお手洗いを済ませておくといい。その後、店員から器やそばつゆなどの準備をしてもらい、さっそくチャレンジすることに。
店員が開始の合図をすると、カウンターに備えつけてあるタイマーを自分で押し、そのまま40分間のチャレンジスタート。すぐにベルトコンベアにわんこそばが回り始め、自分の好きなタイミングで取ることができるが、取ったそばは一度自分のお椀に移すのがルールとなっている。開始すると、店員はマイクを通して「最高記録目指して頑張ってください!」「男性の平均はおよそ80杯から100杯、女性の平均は60杯から80杯です!」といった感じで、マイクパフォーマンスのように盛り上げてくれる。ちなみに筆者の目標は60杯、同行した友人は100杯を目標に食べ始めることに。
食べてみると、そばは細めで柔らかすぎないほどよい硬さ。つゆは濃すぎず、だしを感じる風味もあり、つゆが薄まってきたら奥の桶へ移して新しくつゆを足すことが可能で、最後までそばの味を楽しむことができる。総合的に食べやすい印象はあるものの、味はオーソドックスで特にこだわりのないそばのように感じた。30杯まではスムーズに進めることができたが、そばの味に飽きてしまったため薬味を使って味変してみる。わさび、しょうが、ネギ、きざみのりをそれぞれ入れて食べてみると、そば本来の味が気にならなくなり、口の中をリフレッシュさせることができた。味変効果は絶大で、さらに記録を伸ばすことにつながりそうだ。
しばらくすると、フタがある「わんこそば」がベルトコンベアに回り始めたのだが、店員の説明によると、中には薬味1種類か、量がおよそ3倍になったそばが入っており、さらにランダムで中身の入っていない器が回っているとのこと。これらを取ると、それまで食べた自分の記録に合算することができるのだ。
3倍になったそばを取ってしまった場合、すべて食べきらないと記録に入らないが、薬味の1つだった場合は完食しなくても記録に入り、空の器を取ることができれば食べずとも記録を伸ばすことが可能という、ロシアンルーレットのような楽しみ方もできる。
試しに筆者もフタ付きの器を取ってみたが、中身は薬味のゴマが入っており、食べずとも記録を伸ばせる結果となった。
アミューズメント要素満載で楽しい
残り10分となった頃、目の前のタイマーが刻む時間や店員の掛け声で焦る気持ちはあるものの、ラストスパートの畳みかけはできず、あっという間にチャレンジ終了となった。筆者が90杯、友人が123杯と目標を上回る記録を出すことができた。
非常にアミューズメントの強い印象のある「アミューズメントわんこそば くるくるわんこ」。一般的にイメージする「わんこそば」には、1人につき給仕担当が1人ついてくれるが、こちらはセルフサービスなのでテレビで芸能人などがチャレンジしている雰囲気とは違うだろう。また、リーズナブルな焼肉チェーン店の食べ放題コースや、そこそこのランクのシティホテルの朝食ビュッフェが3000円程度で食べられることを考えると、わんこそばだけの食べ放題で3300円というのは、正直割高に感じてしまう。
ただ、回転式であるために自分のペースで食べられるということや、食べながら楽しめるゲームのようなアミューズメント要素も込みで考えると、一度は体験してみてもいいかもしれない。複数人で訪れるとなれば盛り上がること間違いなしなので、チャレンジしたい方は足を運んでみてはいかがだろうか。
(文・取材=加藤棗/A4studio)