昨今の食材費高騰の影響で、ネット上では「少しでも利益を得るためにコンビニ弁当でステルス値上げが行われているのでは?」といった疑いや批判の声が増えてきている。例を挙げると、一見すると値段は据え置きのコンビニ弁当が、容器を底上げしたり、2重底にしたりすることで、実質的な内容量を減らしているというものだ。
ということで今回、大手コンビニエンスストアのセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンのお弁当や菓子パンのなかで、ネット上で不評が相次いでいる商品の実態調査をする……予定だったが、各チェーンの店舗を何軒かリサーチしたものの、ネットで噂されている「ステルス値上げ疑惑」の商品は陳列されていなかった。今こうした噂の立っている商品の入手はかなり難しいのかもしれない。
そこで改めて、購入が可能だったコンビニ商品で「ステルス値上げ」がありそうな商品を独断でピックアップし、その容器を検証することにした。世間からの批判を受けた今、コンビニ業界の「ステルス値上げ」はなくなっているのだろうか。
セブン-イレブン
【炭火焼さば 幕の内弁当/594円(税込、以下同)】
まずは、コンビニ最大手のセブンから検証していこう。選んだのは昨年12月13日に新登場した「炭火焼さば 幕の内弁当」。本品はふっくらとジューシーな炭火焼さばをメインに、副菜に鶏の竜田揚げや厚焼き卵などが入ったお弁当だ。その特徴は上段におかず、下段にごはんが入った2重底仕様の容器である。
パッケージを開けてみると、上段容器の底は比較的平らで、気になるレベルの底上げはなされていないように見えた。となると気になってくるのは下段容器。2重底仕様の容器は、店頭に並んでいる状態ではわからない下段部分の内容量が少ない場合も多いとネット上では囁かれている。不安を胸に下段部分を見てみると、意外にも5cmほどの深底仕様となっていて、いい意味で肩透かしを食らうことになった。
しかし、この下段容器には少々気になる点もあった。というのも、この下段容器は下にいくにつれて先細っていく形状になっているのだ。店頭で手に取るときは大抵上から見るので気がつきにくいが、容器を横から見てみるとこの仕掛けに気がつくというわけだ。これが「ステルス値上げ」のためのデザインなのかは定かではないが、内容量のイメージを勘違いしやすい形状なのは否めないだろう。
【にんにく醤油仕立ての若鶏唐揚げ弁当/540円】
次は、昨年11月2日から販売されている「にんにく醤油仕立ての若鶏唐揚げ弁当」。にんにく醤油風味の味付けで食欲のそそる唐揚げが4個入ったオーソドックスなお弁当という印象。容器はセブンでよく見かける茶色の容器だが、検証していこう。
結論からいうと、「ステルス値上げ」と疑いたくなる露骨な底上げはなされていなかった。容器内に多少の凹凸はあったが、おそらくは具材のくっつき防止などの理由で施されているものではないだろうか。
【チョココロネ 1個入/108円】
今度は弁当ではないが、菓子パンのジャンルを見ていこう。選んだのは昨年10月4日に発売された、ふわふわ食感とチョコクリームが魅力の「チョココロネ 1個入」だ。チョコクリームの詰まり具合が気になるところだが、果たしてどうなっているのか。
半分に切ってみると、3分の2はチョコクリームが詰まっていたものの、残りはパンのみというのが実態だった。途中まではぎゅっと詰まっているので、後半になって「あれ?」と肩透かしを食らってしまうのは否めない商品かもしれない。だが、ネットで批判のあったサンドイッチ系商品のように、具材がほんの少ししか入っていないというような極端なものではなかったので、許容範囲という印象を受けた。
ファミリーマート
【幕の内弁当/498円】
ここからは、業界シェア第2位を誇っているファミマの商品を検証していく。選んだのはファミマの定番商品として長らく愛されてきた、豊富な具材が魅力の「幕の内弁当」だ。パッと見て気になったのは、容器の形状にきっちり沿ってごはんが入っていないという点。今回購入した商品がたまたまそうだったのかもしれないが、つい「ステルス値上げ」への不安が高まってしまう。
容器の底を確かめてみると、おかず、ごはんの順で多少底上げ調整がされていたが、これは全体的な見栄えのバランスを揃えるための措置なのかもしれない。具材も多いので細かな底上げ工夫がなされているのではと疑っていたが、実態は意外にも真摯なものだった。
【バター香る!香ばし醤油ソース ポークソテー弁当/648円】
次は、ファミマのガッツリ系お弁当を紹介しよう。昨年12月6日に販売が始まった本品は、バターの香りとポークのコクが絶妙なマッチングを見せる人気商品なのだが、一目見ると容器がネット上でよく批判される2重底となっており、黒い容器と一回り大きい茶色の容器がセットになっていることがわかる。
具材が入っている黒い容器から見ていくと、コーンが入った一角は多少底上げされていたが、ポークソテーとごはんが入ったエリアは平坦で底上げされている印象はなかった。
やはり気になる2重底の部分だが、茶色の容器を外して黒の容器と並べてみると、確かに厚さに違いがあった。だが、ネット上で批判が多かった露骨な2重底と呼ぶには少々無理のある作りで、印象としては「レンジでチンをしたときの熱さを防ぐための断熱用なのかな」というレベル。人によっては不満を抱くかもしれないが、これをして「ステルス値上げ」と断罪するのはいささか言い過ぎな気がする。
【フライドチキン(ミートソース添え)/538円】
次はパスタ系の商品を見ていこう。昨年12月27日に発売が始まったこの商品は、パスタの上にドーンとボリューミーなフライドチキンが盛られており、食べ応えが魅力というメッセージが伝わってくる見た目。その中身も食べ応えが伴っているのか、確かめていこう。
容器の底に多少凹凸はあったが、これをして悪質な底上げとはいえないデザインだった。コンビニのパスタ商品には中央部がかなり盛り上がり、見た目と内容量に大きな差があるものもあったが、本品は非常に良心的なデザインといっていいだろう。
ローソン
【グリル満天星お墨付き オムライス/689円】
次は業界シェアで3位のローソンをチェックしていこう。最初に選んだのは、昨年4月12日に発売開始の「グリル満天星お墨付き オムライス」。その名のとおり、麻布十番にある人気洋食店「グリル満天星」が監修したという一品で、卵とケチャップライスが別々の容器に入っている。それ自体はいいのだが、気になるのは底上げがないかという点だ。
容器の底を見てみると、ケチャップライスのほうは底上げを感じながったが、卵が入っていた右側の容器は、中央が半円型に高く底上げされており、開封前に感じた卵のたっぷり感と実態にはいささか乖離がある印象を受けた。これは少々、底上げ感があるといえるだろう。
【これがチキン南蛮弁当/689円】
「これが」と自信たっぷりに銘打つとおり、仕切りからはみ出すほどのボリューミーなチキン南蛮が魅力の本品は、昨年3月29日から発売がスタートした商品。ごはんも満遍なく端まで敷き詰められており、一見すると問題はなさそうだ。
容器の底にはこれといった底上げの痕跡は見つからず、良心的な商品といっていいだろう。見た目どおりの食べ応えを味わえるローソンの企業努力を感じさせる一品だった。
【中身たっぷりホイップあんぱん/138円】
ローソンの最後を飾るのは、「中身たっぷり」というコピーに期待が高まる「中身たっぷりホイップあんぱん」。購買意欲を誘うそのコピー通りの中身なのだろうか。
中身を確かめてみると、まさに期待通りたっぷりのホイップが敷き詰められていた。また、あんこも程よいバランスでしっかり入っている。菓子パンにありがちなスカスカ系とは一線を画す、食べ応え抜群の一品だった。
総評:「底上げ」はほぼない?
3社ともに今回選んだ商品でいうと、そのほとんどが良心的な容器を使った商品だった。だが、確かにポツポツと「新手のステルス値上げ」を疑いたくなる容器を使った商品があったのもまた事実。とはいえ、それもネット上で声高に糾弾されているような露骨な「底上げ」や「底絞り」「2重底」が横行している印象はなかった。すべての商品が消費者的に「騙された!」と感じる商品ばかりではないはずなので、この記事を参考に損を感じない買い物をしてもらえれば幸いだ。
(文=A4studio)