それが自らの意思によるものか、それとも必要に駆られてのものかはともかく、社会人になっても何かを学んだり、新しい知識を覚えたりする機会は多い。ただ、やってみると思うように知識を吸収できなかったり、覚えたことをすぐに忘れてしまったりして「やっぱり学生時代と比べると物覚えが悪くなっているんだな」とショックを受けたり落ち込んだりした経験がある人もいるだろう。ただ、脳の機能は若い頃の方が高いかというと、そうでもないようだ。
学生時代と同じ勉強法はNG!大人だからこそ効果的な勉強法
『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(加藤俊徳著、サンマーク出版刊)は、脳内科医の著者が、大人の脳の特性とそれに合った学び方を解説する。本書によると学生時代の脳と大人になってからの脳では働き方が違うが、かならずしも学生時代の方が、脳機能が優れているともいえないようだ。少なくとも、大人の脳にもまだ十分な伸びしろがある。
ただし、学生時代の勉強法と同じやり方で勉強しても、思うように情報を記憶できない。学生時代に丸暗記などが得意で成績が良かった人ほど、当時と同じ勉強法で勉強しても成果があがらず「物覚えが悪くなった。もうトシだなぁ」となりやすい。
ただ、記憶力は加齢によって下がるものではなく、脳自体の機能は生涯にわたって成長し続けるのだそう。若い頃のように物事を覚えられないのは、大人になった今の自分の脳に合った勉強法がわかっていないからだ。
大人の脳に「丸暗記」が向いていないワケ
こと記憶については、大人の場合は単純に「これを覚えよう」と思っても脳は思ったように働いてくれない。大人が何かを覚えようと思ったら、「覚えよう」と思うより、「理解しよう」と頭を働かせるのが近道だという。丸暗記よりも、理屈や意味に思いを馳せることで記憶に定着するのが大人の脳の特徴なのだ。
脳の神経細胞は年齢とともに減少していく。これが「若い頃の方が脳の働きがいい」と信じられているゆえんだろう。しかし、脳の神経細胞同士をつなぐネットワークは年齢に関係なく成長していく。このネットワークをフル活用するのが大人の学び方のコツである。
たとえば、先ほどの「理解しよう」と頭を働かせて記憶する方法は、本書でいうところの脳の「記憶系番地」と「理解系番地」を働かせるやりかただ。脳にはこの他にも「思考系」「感情系」「伝達系」などの番地があり、これらを連携させることで、効率的に学ぶことができる。
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多くの人は40代以降に脳の力が衰えたと感じるものだが、実際はそんなことはなく、脳が“旬”を迎えるのは30代~50代、なかでも45歳から55歳が脳の最盛期なのだそう。だからこそ、今の自分の脳に適した学び方を見つけられるかどうかで学びの成果がまったく変わってくるのである。
勉強はしようと思った時がはじめ時。その勉強を実りあるものにするために、本書で明かされている知識は大いに役立ってくれるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。