国家最高セキュリティのウラン工場に、なぜウイルスが侵入?
(1)そもそも、サイバー攻撃は「戦争」または「武力」と認定できるだろうか?
(2)サイバー攻撃を行う/行われる前提としての「国際紛争」とは、どのような状態をいうのだろうか?
(3)「戦争」とした場合、相手国を認定しなければできないが、「サイバー攻撃」を仕掛ける国が「宣戦布告」をすることになるのだろうか? 仮に宣戦布告をしたとして、それは国際法上の戦争開始として認められるだろうか?
(4)攻撃先(日本)のサーバが、紛争国とまったく関係のない国のサーバ経由で攻撃を仕掛けられた場合は、我が国はどの国と交戦していることになるのか? そもそも、交戦国をどのような手段で判定すればよいのか?
(5)攻撃元のサーバに対して、逆クラック攻撃をかけることは、我が国の防衛の基本的な考え方である「専守防衛」に反することにならないか。
(6)我が国がサイバー軍備を保持する、または保持していたとした場合、「陸海空軍その他の戦力」の「どれ」に当たるのか? あるいは、どれにも当たらないのか? 当たらないとすれば、サイバー軍備は、憲法第9条の対象外なのか?
(7)さらに突っ込んで言えば、サイバー攻撃がいずれの戦力にも該当しないと(例えば司法等によって)判断されれば、我が国は憲法第9条に拘束されることなく、他国の社会インフラを壊滅させ得るような、徹底的なサイバー攻撃が可能となるのか?
(8)サイバー戦争における「交戦権」とは、どういう概念で捉えればよいのか?
などなど。
法律の解釈は、時代や技術と共に変化していくものとはいえ、「サイバー戦争」の概念を法律に取り込むことは、かなりタフな仕事になりそうです。
これは、私には少々荷が重すぎる仕事です。残念ですが、専門の方にお任せするしかないように思います。
最後に、今回の内容をまとめます。
(1)サイバー攻撃は、かつての個人的な「自己顕示欲」から、組織的な「情報の窃盗」や「テロリズム」に変わってしまった。
(2)制御システムへの「サイバー攻撃」は、ついに制御装置の破壊を可能とするレベルにまで達してしまった。
(3)情報システムへの攻撃から制御システムへの攻撃に移行しつつあり、その「サイバー攻撃」は、「サイバー戦争」という概念に至り得る。
(4)「サイバー戦争」に対する、憲法第9条を含む新しい法整備が焦眉の急である。
では、本日はこれにて失礼致します。
(文=江端智一)
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<参考文献>
【註1】「ネット上の危機管理と安全保障」(電気学会論文誌C,Vol131 No2.2011)