靴の修理や合鍵作成で知られ、全国に約300店舗を展開する「ミスターミニット」が、スマートフォン(iPhoneのみ)の修理にも乗り出している。
また、2015年12月には、アメリカのスマホ修理・買い取りサービス「iCracked」の世界初店舗が東京・渋谷に登場した(当面はiPhoneのみ)。同社は、米経済誌「フォーブス」の「2015年最も有望な企業ランキング」で18位に選ばれているベンチャー企業で、拡大するスマホ修理市場は激化の一途をたどっている。
こうした修理業者に修理を依頼する最大のメリットは、「その場ですぐに直してもらえること」だ。端末を一定期間預けなくてもいいことから、利用者は後を絶たない。なかでも、修理の依頼がダントツに多いのが、国内スマホ市場で6割以上のシェアを誇るiPhoneだ。
しかし、アップルストア以外の業者に修理を依頼するのはリスクもありそうで、二の足を踏んでしまう人もいるはずだ。実際、どの業者に修理を頼むのがいいのだろうか。また、料金などの違いは、どのくらいあるのだろうか。スマホ修理の実情について、スマホ評論家の新田ヒカル氏に話を聞いた。
スマホの修理業者が乱立するワケ
「昨今、確かにスマホ修理業者は増え続けています。というのも、iPhoneの場合はアップルストアに修理に出すと、直るまで端末を預けなければいけない上、必ずしも代替機も貸してもらえないという難点があるためです。貸してくれる場合は、Androidになってしまうんです。iPhoneユーザーとしては、Androidを渡されても困りますよね……」(新田氏)
では、各携帯電話事業者(キャリア)のショップに修理に出したいところだが、キャリアショップはiPhoneの修理を受け付けていない。その点、修理業者は「その場ですぐ直せる」が売りのため、利用者が後を絶たないのだという。
「今や、スマホ修理は県やエリアごとに各業者の料金を比較するサイトまであるぐらいです。『iPhone 修理 比較』などで検索すれば、比較サイトがいくつも見つかりますよ」(同)
アップルストア以外にiPhoneを修理に出したことのない人は、そんなサイトがあること自体、知らないかもしれない。なぜ、そこまでスマホ修理業者が増えているのだろうか。
「スマホ修理というのは、結局、iPhone修理のことなんです。Androidは機種が山ほどあり、各店舗が修理用のパーツを確保するのが難しい。それに対して、iPhoneは『6』と『6s』の部品がほとんど同じで、『5』と『5s』、『4』と『4s』もほぼ同じです。
ある程度、部品の在庫がコンパクトで済むため、ビジネスとしては成り立つのです。それに、ミスターミニットの場合は、鍵1本900円~、靴の修理1300円~などと比べると、iPhone修理は単価が高いですからね」(同)
靴の修理業者がスマホ修理に参入するうま味は、十分にあるというわけだ。しかも、そういった業者にiPhoneの修理を頼むことのリスクやデメリットはほとんどないという。
「僕自身、液晶画面のクラッシュで2回ほど、iPhoneをそれぞれ違う業者に修理に出したことがありますが、結論からいえば、ほとんど問題はありませんでした。ある業者に取り替えてもらった液晶には、碁盤の目のような細かいマス目が入っていましたが、事前に説明もあり、じっくり見ないとわからないレベルのものです。神経質な人なら気にするかもしれませんが、僕はまったく気になりませんでした」(同)
バッテリーの交換は要注意?
画面のクラッシュであれば、修理業者に出しても大きな問題はなさそうだが、それ以外の「水没」「バッテリーが持たなくなった」「ホームボタンが効かなくなった」などの不具合に関しては、どうだろうか。
「修理依頼で、画面クラッシュの次に多いのが水没だと思われますが、これは修理業者に頼めば予防策を講じることができます。iPhoneの本体を開けて、中に薄い皮膜をつくるのですが、一度皮膜をつくれば、ある程度は水が入っても大丈夫です。値段はどの業者も6000円ぐらいなので、“水ポチャ”しがちな人は、やって損はないでしょう」(同)
一方、注意が必要なのが、バッテリーの交換だという。バッテリーには個体差があり、スペックに差が出やすいためだ。
「以前、iPhone 4sを2台持ちしていた時に、それぞれバッテリー交換に出したことがあるのですが、1台は長持ちしたのに、もう1台は全然持ちませんでした。入っているアプリもほぼ同じなのに、バッテリーの持ちが全然違うのです。そういった個体差がかなりあるため、バッテリー交換は業者によって差が出るかもしれません」(同)
また、バッテリー交換で注意すべきなのが金額面だ。例えば、A社のバッテリー交換が6000円でB社は8000円だった場合、A社に出したくなるのが心情だろう。しかし、値段が安くても「バッテリーの品質はどうか」といった問題があるという。
「そういう意味では、あまりに安い業者は気をつけたほうがいいかもしれません。店員さんに聞けば『うちはいいバッテリーを使っていますよ』と言うでしょうが、実際はどうなのかわかりません」(同)
さらに、iPhone 5s以降に採用されている指紋認証が可能な「Touch ID(ホームボタン)」の修理は、以前は修理業者に頼むと大きな問題があったという。
「修理業者によってTouch IDが交換されると、iPhone自体が使えなくなる仕組みだったのです。これがアメリカで問題になり、アップル側が妥協して、最近では業者での交換も不都合なくできるようになりました。今後、何かしら別の問題が出てくるかもしれませんが、この件ではアップル側が折れたかたちになったので、そんなに心配はないと思います」(同)
スマホ修理業者の見極め方
修理業者にiPhoneを修理に出しても、それほど大きなリスクはなさそうだ。そうなると、次に気になるのは業者選びの基準だろう。
「重要なのは、どれだけの症例をこなしているかということです。その点で考えると、新規の業者よりは、ある程度長い間修理を行い、複数の店舗を展開している業者のほうが間違いはないと思います。店舗を拡大しているということは、部品の調達コストが安く済み、修理技術者の育成もしっかりしているという証明にもなります。
例えば、これらの条件を満たす、おすすめの業者のひとつが、都内だけで12店舗ある『iPhone修理工房』です。実際、僕も修理を依頼したことがありますが、接客が丁寧で従業員の質がいい。ほかの業者と比べても安心できるお店です」(同)
ちなみに、iPhoneを修理に出す際は「セキュリティ対策として、パスワードを設定しておくこと」「データのバックアップを取っておくこと」が必須だという。「ここまでやって初めて、修理に出す準備完了です」(同)
そうとわかったら、現在、派手に画面クラッシュしたiPhone 6をヒヤヒヤしながら使い続けている筆者も、さっそく修理に出してみたいと思う。
(文=青柳直弥/清談社)