落第経営のソニー・ストリンガー卒業 赤字続きでも高額報酬で株主やOBから非難轟々
ストリンガー氏はソニーの再生に失敗した。だが、経営責任を問われることはなかった。ソニーは委員会等設置会社の形態をとっており、取締役の指名・解任権は指名委員会が握っている。指名委員会に名を連ねる社外取締役が首を縦に振らなければ、ストリンガー氏の首を切ることはできない仕組みになっていた。建前上、指名委員会には、それだけの権限がある。
産業界からは「経営責任を取ろうとしないストリンガーCEOの居座りを許した指名委員会とは名ばかりで、まったく機能していないのではないか」との痛烈な批判が起きた。ストリンガー氏の“お仲間”で指名委員会を固めたから、ストリンガー氏は経営責任を問われずに済んのだ。外国人の社外取締役は、ストリンガー氏を護衛する“親衛隊”と揶揄された。
ソニーは12年3月期の連結決算で、過去最悪となる4566億円の最終赤字に陥った。ストリンガー氏は会長にとどまるつもりでいたが、巨額赤字の前に、さすがの指名委員会も続投を認めるわけにはいかなくなった。結果的に会長兼社長兼CEOを外れた。
ストリンガー氏はゴーン氏にはなれなかったが、役員報酬だけはゴーンに倣った。11年3月期の役員報酬(ボーナス、ストックオプションを含む)の8億1650万円は、全上場会社のなかで、ゴーンに次いで第2位だった。高額報酬は、3期連続して赤字経営の“論功行賞”かと皮肉られた。
ストリンガー氏がCEOを退任した12年6月の株主総会では、彼の巨額報酬がやり玉に挙がった。4期連続の赤字を垂れ流しながら4億4950万円の役員報酬を受け取っていたからだ。株主からは「ソニーの企業価値の毀損は、ストリンガー前CEOが進めた“賞味期限切れ”の戦略が原因だ」との批判が噴出した。株主総会で業績不振の原因を超円高や東日本大震災のせいにするなど、言い訳に終始したストリンガー氏は、株主から「資質のあるトップは外部環境のせいにはしない」と説教されるありさまだった。
平井社長は、自分を大抜擢してくれたストリンガー氏に「心から感謝」しているのかもしれないが、何をもって「多大な貢献」をしたといえるのか。そう思っているのは、平井社長とその側近だけではないのか。ソニーのOBや現役の若手幹部は平井社長のコメントにあきれ、深く失望している。平井一夫(カズ)社長の前途は多難である。
(文=編集部)