東京・表参道のアップルストア前の路上で、転売目的でiPhone100台を購入しようとしていた男性を殴ってカバンを奪おうとしたとして、警視庁暴力団対策課は15日までに中国籍の王雪生容疑者ら男3人を強盗致傷容疑で逮捕した。王容疑者は「私には関係ありません」と容疑を否認している。
ネット上では、事件そのもの以上に「一度に100台も買えるのか」「明らかに転売目的なのに売るほうもおかしいのでは」といった意見が噴出する状況となっている。
事件は今年4月に発生し、王容疑者らは当時32歳の男性が乗っていた車を取り囲んで鉄パイプのような物で殴り、940万円分のギフトカードや現金35万円が入ったバッグを奪おうとしたが、男性が抵抗したために何も奪えずに逃走したとされている。
同課によると、被害者の男性はiPhoneの転売で生計を立てており、前日にも表参道のアップルストアでiPhoneを100台近く購入していた。
この事件が報じられると、ネット上では「被害者男性が転売目的でiPhoneを連日にわたって約100台購入しようとしていた」ということに注目が集まり、SNSで「iPhone100(台)」がトレンドワード入りする事態となった。
SNSでは「転売がこれだけ問題になっているのにアップルストアが一人に100台単位で売るっておかしくない?」「明らかに転売目的だとわかっても普通に売るんだな」「売ってくれるんだから、そりゃ転売ヤーがいなくならないわけだよ」といった声があがり、アップルストアの対応を疑問視する意見が相次いだ。
かつて携帯電話は「端末と回線契約のセット販売」で、1名義あたり「5回線まで」といった保持の上限があったが、2019年の電気通信事業法改正の以降は端末の単体購入が可能になった。これによって実質的に保持上限がなくなり、転売目的で大量に購入できるようになった。
法的には「何台買ってもいい」という状況のため、明らかに転売目的であっても店側が断ろうとすればトラブルになりかねない。また、ネット上では「通常のお客様でも転売ヤーであっても同じ売上。正直、ノルマが厳しい時は転売目的でも助かる」といった、販売店のスタッフらしき人物からの本音も漏れ聞こえてくる。
さらに、最近の急激な円安によって「日本で定価で買っても中国などで高値で売れる」という状況が生まれ、それが「転売ヤー」の増加に拍車をかけている。
ドコモは「箱に名前」で転売対策も…
といっても、販売側が転売対策を講じていないわけではない。今年6月には、NTTドコモが割引販売をしている店舗でiPhoneを購入した人に対して「油性ペンで箱に名前を書いてもらう」「箱に店のハンコを押す」といった転売対策をしていることが話題になった。
だが、これも「メルカリとかで箱だけ売ってるし、本当に効果があるのか」「箱を綺麗に保存しておきたい人には受け入れがたい」「転売なんてするつもりないのに気分が悪い」といった意見が寄せられ、決定打にはならなさそうな気配だ。
また、iPhone14が発売された16日にはITジャーナリストの三上洋氏が自身のTwitterで「アップルストア丸の内で異例の処置『iPhone14当日販売はカード払い不可、現金不可、Paidyかオリコローンかキャリア契約のみOK』と。現金NGとは驚き。転売対策?」と報告。一部のアップルストアでも転売対策に本腰を入れる動きが生まれているようで、その効果のほどが期待されている。
6月には、総務省のワーキンググループで携帯端末の転売対策が議論の対象となったことが明らかになっている。いずれ政府主導の対策が講じられる可能性もあり、今後も「転売ヤー」問題への関心は高まっていきそうだ。