最近、リモートセンシング(遠隔観測)と呼ばれる分野でベンチャー企業が活躍している。遠方から観測するリモートセンシングの中でも、宇宙からのリモートセンシングにブレークスルーが起きつつある。
昨年12月27日には、アメリカ・シリコンバレー発の衛星画像サービス企業、スカイボックス・イメージングが、商用人工衛星として世界で初めて宇宙から高精細HD映像で地球を撮影することに成功した。同社の人工衛星はミニ冷蔵庫ほどの小さなサイズで、この小型人工衛星を2018年までに24機打ち上げる予定だという。今回、撮影に成功したのは昨年11月に打ち上げられた1号機SkySat-1だ。
SkySat-1では、地上にある1メートル未満の大きさのものを宇宙から確認することができる。例えば、コンテナ貨物の動きを宇宙から監視することで、世界経済への影響などを予測する、という用途も考えられる。
何より、小型人工衛星は費用が安いという点が大きい。SkySat-1の場合は、従来型の同精度の撮影衛星に比べて、1桁以上も費用が少なく済むという。
今まではコスト面から衛星を利用できなかった新興国の農家のようなユーザーであっても、衛星画像を利用することができるようになる。また、農場を広域に監視することで、どれだけの収穫量があるかを予測し、それをもとに先物取引でリスクをヘッジすることも可能だろう。
●さらに小さくなる人工衛星
SkySat-1よりもさらに小さな人工衛星を手がけているのが、アメリカ・サンフランシスコに本社を置く、起業間もないプラネット・ラブズだ。10センチ×10センチ×30センチの小さな空き箱サイズの“超”小型人工衛星で、非常に安価につくられているため、画像はやや粗い。それでも、3~5メートルのものを見分けることができる。
プラネット・ラブズは、年明けに28機の“超”小型人工衛星をまとめて打ち上げている。スカイボックス・イメージング社のケースも同様だが、複数の小型人工衛星がすべて打ち上げられれば、それらを駆使して地球上の1地点を1日に何度も撮影することができる。
こうしたリアルタイムに近い衛星画像を使えば、例えばスーパーの駐車場に止まっている車を“常時”監視することができる。車の台数の変化を追うことにより、スーパーがどの日のどの時間帯に繁盛しているかを分析する。ライバル店の動向を知る目的で、リモートセンシングを活用するところが出てくるかもしれない。
一方で、小型人工衛星とは別のアプローチでリモートセンシングを試みるベンチャー企業もある。カナダのアースキャストは、国際宇宙ステーションにカメラを付けて地球上を撮影する計画を進めている。昨年12月に国際宇宙ステーションへの取り付け作業が行われたが失敗。現在、再挑戦に向けて調整中だという。
以上のようなリモートセンシングは、プライバシーなどの問題をはらんではいるものの、宇宙ビジネスの可能性を大きく広げるものになるといえる。なお、日本でもアクセルスペースが、2.5メートルのものを見分けられるリアルタイム地球観測網(コンステレーション)を構築するべく、16年から順次、小型人工衛星を打ち上げる計画を進めている。
(文=宮島理)