服コンピュータ、医療活用の期待高まる、アパレル各社も興味～ウェアラブル端末最前線

　プロモーションビデオを見ると驚くかもしれないが、その技術を紐解いてみると、センサーによって動作検知し、ソフトウェアがその動作分析をしている。

　分野はやや異なるが、ソニーのテニスセンサーなどにも通じる技術だ。テニスセンサーは、対応するテニスラケットに装着してプレーすることで、ラケットの動きを検知してスイングの軌道や速度、球を打った回数などを可視化できるというものだ。

　これらのデバイスは非常に小型だが、情報をワイヤレスでPCやスマートデバイスに送り、そのコンピュータが高度な計算処理をする仕組みだ。つまり、役割分担によってウェアラブルデバイスの小型化を可能にしているといえる。

　一方、ウェアラブルデバイスの小型化が進めば、ソフト処理はさらに高度になっていくことが予想され、今後はソフト開発が重要なキーとなるだろう。

●小型化を可能にする基板防水技術

　また、ウェアラブルデバイスのさらなる小型化に役立ちそうな技術としてHZOの防水技術がある。従来、スマホやウェアラブルデバイスは外装に防水処理を施して基板への浸水を防いできたが、HZOが開発した技術は、基板を直接コーティング処理して防水を実現している。

　現時点では、フューエルバンドの最新型がHZOの防水技術を採用しているという。基板自体に防水加工を施すことで、「外装は防水処理をせずに済み、ボディをより小型化できる」「外装の劣化で防水効果が損なわれない」などのメリットがある。将来的には、多くのデバイスで採用される可能性がある技術といえるだろう。

HZOの技術で防水化したiPhoneに水をかけるデモ

●期待高まる服コンピュータ

　今回のイベントでは、服とコンピュータを融合した製品の展示、講演もあった。

　この服コンピュータの分野では、心拍を測ることに主眼を置いたものが多い。センサーを心臓部に配置することで、腕時計型より正確に心拍を計測できる。また、着用者に心臓トラブルなどが起きた場合に、自動的にそのデータを病院に転送することで素早い対応が可能となるなど、医療的なメリットに期待が集まる。

　しかし、現在はまだ服コンピュータはごく初期段階にあり、左胸に心拍センサーを配置し、そこからセンターユニットを結ぶ配線などが貼りつけられているのがはっきりとわかる状態だ。外観としては、洗練されているとはいえない。服コンピュータメーカーのClothing＋によれば、この問題は今後、改善されていくようだ。次のフェーズでは、この配線が目立たなくなり、さらにその次のフェーズでは繊維自体に機能を仕込むようにしていく予定だという。

　そして、最近は多くのアパレルブランドが、こうした服コンピュータに興味を持っているという。今後、多くの衣服がインテリジェントな機能を持つようになる可能性がある。しかし、それには時間がかかりそうだ。

Clothing＋の技術はAdidasなどのウェアにも採用されている

●低消費電力な近距離通信

　ここまで見てきたように、ウェアラブルデバイスの多くはスマートデバイスに情報を送って処理させるため、低消費電力で、より統合された省スペースかつ低コストな通信機能が求められることになる。

　現時点では低消費電力なBluetooth 4.0を採用しているデバイスが多いが、一部の製品では、より低消費電力なAntにも対応しており、場面に応じて使い分けられている。現在、Bluetooth 4.0とAntに対応しているスマートデバイスはアップルのiPhone 5やソニーモバイルのXperiaの一部に限られているが、今後、より多くのスマホが対応するようになるだろう。

　ノルウェーの半導体企業・Nordic Semiconductorは、このような低消費電力な通信に対応するチップを提供し、ウェアラブルデバイスにフィットする機能を提供している。

　ウェアラブルデバイスは新しい可能性を持ったデバイスだが、単体で高い情報処理能力や遠距離通信能力を持たないものが多いため、スマートデバイスがハブ的な存在になる。

　今後も多くのウェアラブルデバイスが出てくることと思うが、それらはスマートデバイスを駆逐するのではなく、スマートデバイスとのコンビネーションで活用されることになりそうだ。スマホに続いて、ウェアラブルデバイスというジャンルによって新しい経済発展効果を生むことになるだろう。
（文＝一条真人／フリーライター）