それゆえ、WiMAX 2+のサービス開始当初に導入した「UQ Flatツープラス」では、2年間は通信量上限を設けず、月額4196円で使い放題としたものの、2年経過後は通信量上限が7GBとなるなど、やや不可解な仕組みとなっていた。同社の代表取締役社長である野坂章雄氏も当時、料金に関しては試行錯誤を重ねており、ユーザーの動向を見た上で料金体系を見直す可能性があるとしていた。
そしてWiMAX 2+の提供開始から2年が近づいた今回の新製品投入に合わせ、同社は方針を明確にするべく新料金プランの導入を打ち出したわけだ。同社はノーリミットであることが大きな価値になっていると判断し、「UQ Flatツープラス ギガ放題」では料金こそ月額4880円となるものの、通信量上限は設けずに「使い放題」を維持することを明確に示している。
ちなみに「UQ Flatツープラス」は使い放題ではなくなるものの、データ通信容量上限が7GBとなり、継続して提供される。また、「UQ Flatツープラス ギガ放題」「UQ Flatツープラス」は月単位で何度もプラン変更できることから、使用量に応じて適切な料金プランを選びやすくなるようだ。
●新たに注目される「直近3日間で3GB」の制限
新料金プランで「使い放題」を維持したUQコミュニケーションズだが、新製品・サービス発表の会場では、記者から別の通信量制限に関する質問が相次いだ。それは4月以降、直近3日間の使用量が3GB以上となった場合、翌日にかけて通信速度を制限する場合があるというものだ。特に昨年末、NTTドコモが3日間で1GB以上の通信をしたユーザーへの通信速度制限を撤廃したことが話題となっていたことから、「直近3日間で3GB」の制限に注目が集まったと考えられる。
最近、3日間のデータ通信使用量が一定量を超えた場合、翌日以降の通信速度に制限がかかるというキャリアの対応に悩むユーザーが増えている。その背景には、通信速度の高速化が進んだことで、大容量通信が必要なサービスの利用が高まっているという現象がある。
実際、若年層を中心に大容量通信が必要な動画をスマートフォンで視聴することは一般的なものとなってきているし、ダウンロード総量が1GB近いゲームアプリなども増えてきている。それゆえ、自宅にWi-Fi環境がなければ、3日以内で1~3GBの通信量を消費してしまうことは十分にあり得る。
Wi-Fiルーターを主力商品とするUQコミュニケーションズがターゲットとしているのはパソコン利用者であり、そちらはより深刻な状況だ。動画などリッチコンテンツの利用に加え、マイクロソフトの「Office 365 Solo」などのように1TBもの大容量クラウドストレージを提供するサービスも登場している。今後、有線のブロードバンド回線と同じ感覚で大容量のデータを頻繁にやり取りするケースが増えることで、先の制限に引っかかってしまう可能性が高まっているからだ。
とはいえ、電波という有限の資源を用いてサービスを提供しているキャリア側としては、多くのユーザーに快適なサービスを提供するためにも、特定のユーザーが帯域を独占してしまわないようになんらかの制限を設ける必要がある。NTTドコモの場合、新料金プランの導入でデータ通信量に明確な上限を設け、超過した場合は有料で容量を増やす実質的な従量制に移行したことから、3日間の通信量に関する制限を撤廃できたともいえる。だが、通信量上限を設けないことを明確にしたUQコミュニケーションズが、この制限を撤廃することは難しいだろう。
野坂氏はこの問題に対し、3日間で3GBを超え、制限がかかった時の通信速度は「YouTubeの標準画質が見られるようなもの」になるとし、通信速度を128kbpsに落とすなど極端に制限することはないと語っている。具体的には700kbps程度になるとのことだが、使い放題の維持を明確にした同社が、増え続ける通信量に対して、どこまで満足度を落とすことなく快適なサービスを提供していけるか。今後の動向が注目されるところだ。
(文=佐野正弘/ITライター)